2016年4月30日土曜日

ニューヨークのディープな移民街を訪れる〜エスニックタウン廻り②(2016年4月10日)

マンハッタンのチャイナタウンやリトルイタリー、
32丁目のコリアンタウン、レキシントン•アヴェニューのリトルインディア。
クイーンズにある中国瓜二つの街のようなフラッシング、
ネパールやバングラデシュ、チベットなどの南アジア系、
さらにエクアドルやコロンビア、メキシコからのラテン系が集まるジャクソンハイツ。
移民街だらけのニューヨークでよりディープなエスニックタウンを訪れてみる。
クイーンズのギリシャ人街アストリアや水タバコを吸えるシーシャバーが密集するリトルカイロと呼ばれるSteinway通り、
サウスブロンクスにあるプエルトリコ人街、
ウクライナを中心とした旧ソビエトの人々が暮らすブルックリンのブライトンビーチ、
カリブ海に面した南米のマイナーな国、ヒンドゥー教徒が多いガイアナ人のコミュニティーがあるリッチモンドヒル。
世界周遊してすでに訪れた国々やこれから訪れる国を思いつつ移民街を歩き回るのは楽しい。
大都会ニューヨークに滞在しながら世界一周の気分が味わえる。


クイーンズのアストリア。
Astoria-Ditmas駅、Astoria Boulevard駅周辺は青と白の縞のギリシャ国旗がなびいており、
ギリシャ風のカフェがめにつく。
ギリシャだけでなくアルバニアの国旗も見かける。


視覚的に特徴がないギリシア人街なのでクイーンズの高架下の町並みに馴染んでいる。
どう見ても普通の住宅街に入っていくと、ギリシャ正教の教会が佇んでおり、
黒い衣装をまとった年配のギリシャ系の人を見かけたりした。


ギリシャ料理を出す食堂タベルナやジロス屋もあるものの、
本場ギリシャでも安くないギリシャ料理をニューヨークで食べてみようと思わず。
また、ジロスはホットドッグやファラフェル同様、ニューヨーク中のカート屋台で食べられる。

アストリアを西に向かうとアストリアパークにぶつかり、
クイーンズからWards Islandに架かる橋が現れる。
まるでシドニーのハーバーブリッジのレプリカのような荘厳な橋である。


残念ながら電車専用の橋で歩行者は通れないようだ。


アストリア南部のリトルカイロ、アラブ人街。
Astoria Boulvard駅を東に進み、高架下をくぐってSteinway通りを南下すると、
懐かしい香が鼻孔をつく。
水タバコのフルーティーな香り。
グランド•セントラル•パークウェイと30丁目に挟まれたsteinway通りはリトルカイロと呼ばれているそうだ。



普通に歩いていれば素通りしてしまいそうな周囲に同化したモスクがある。
訪れた日はイスラム教徒の休日の金曜日とあってモスクから出てくるムスリムの人々が多かった。
リトルカイロと呼ばれているが、エジプト人だけが集まっているわけでなく、
モロッコ料理店やイエメン料理店、トルコ風のケバブ屋もある。


ただ、何かとムスリムに冷たいニューヨークだけあってロンドンやパリなどのヨーロッパ都市のアラブ人街に比べると活気がなかった。


サウスブロンクスのHunts Point(ハンツポイント)。
治安が悪い地域と言われているので、気を引き締めてサウスブロンクスにも寄ってみる。
サウスブロンクスの唯一の見どころというべきヤンキース•スタジアム。


立ち寄った4月5日はちょうどヤンキースの開幕戦が行なわれており賑わっている。
ちらっと覗いてみると、スコアは2対2であり、二年連続開幕戦先発の田中はすでに降板していた。

ヤンキース•スタジアム目の前のバス停からハンツポイント行きのバスが出ていたので乗り込む。
市バスから見るサウスブロンクスの町並みはお世辞にもマンハッタンにように綺麗と言えないけれども、
シェアハウスがあるジャクソンハイツ周辺の界隈とあまり変わらない気がする。
建物の前で黒人がたむろしている光景はハーレムに似ている気もする。
降り立ったハンツポイントの地下鉄駅周辺をぶらついてみると、
黒人よりもヒスパニック系が目立ち、住宅地の壁にはプエルトリコの旗が描かれていたりする。
昼間歩く分には問題なさそうだけれども、イーストハーレム以上に寂れた雰囲気があり、
シャッターを降ろしたままの店も目につき、日が暮れてから歩き回りたい衝動に駆られない。
ニューヨークの後、中米を北上してから立ち寄るプエルトリコ。
すでに予約したカリブ海クルーズの発着地でもあるプエルトリコを先取りしてみたいものの、
ハンツポイントでプエルトリコの雰囲気を味わえそうな安食堂など見つからず早めに去る。
尚、ネット情報によるとハンツポイントは売春により赤線地帯となっており、犯罪発生率が高いそうだ。


ブルックリン南部、ブライトンビーチにあるウクライナ人街。
ウクライナをメインに旧ソ連からの移民が住んでいるそうで、リトルオデッサと呼ばれている。
オデッサとは黒海に面したウクライナの港町。
ジョージアのバトゥミからオデッサまで黒海を航海するフェリーも運航しており、
ユーラシア大陸をコーカサスからヨーロッパに向かう旅行者には少なからず知られている。


ちなみに、ブライトンビーチのすぐ近くには遊園地で有名なコニーアイランドがある。
ニューヨークの夏の週末は人が集まりそう。
風が冷たい3月下旬でも厚着の人々がルナパークで遊んでいる。


有名なファーストフード店も長列なものの家族連れが多く、
寒い中おじさんバンドが一生懸命演奏しており、
ちょっとばかり場末な週末の雰囲気も感じる。
いや、古き良きアメリカを垣間みれたと言った方がいいかもしれない。



当然誰もいないブライトンビーチ。
波が高くなくても見ているだけで骨の髄まで凍えそうだ。


閑散としたビーチと旧ソ連のウクライナにありそうな無機質なマンションがよりリトルオデッサの風情をかき立てる。


ブライトンビーチ駅周辺がリトルオデッサの中心で英語よりもキリル文字が目立つ。



クイーンズのエスニックタウンでは当たり前だったラテン系やアジア系、アフリカ系もほとんどいなく、
ロシア人のような金髪の人々が映画で目にしたような高架下の街を歩いている。
少なくともブライトンビーチを初めて訪れたアジア人にはロシア人もウクライナ人も見た目の違いが分からないけれども。


高架下のブライトンビーチ•アヴェニュー沿いには惣菜を売るデリが多く、
サラダや魚の薫製、肉類の様々な惣菜を眺めていると、昨年過ごしたキルギスタンやカザフスタンのスーパーを思い出す。
中央アジアもウクライナもかつてソビエトだった国々だ。
また、予想通りブライトンビーチの酒屋やスーパーで売られているロシア製ビールやウォッカは安かったし、
ウクライナ料理店もそう高くない。
ボルシチやロシア風餃子のペリメニのスープで6ドルくらい。
ランチタイムに入った食堂は偶然にもウズベキスタン•カフェ。
壁にサマルカンドやブハラの絵が飾られており、
去ってまもないユーラシア大陸、シルクロードのウズベキスタンが蘇ってくる。
高揚感に包まれながらメニューを見るとなんとウズベク風ラグマンがあったので迷わず注文。
味はもちろん、ウイグル系と違いスープに浸った本場のウズベク風ラグマンににんまり。
ウズベキスタンで毎日食べたノンと呼ばれるパンまでついてきた。
これで7ドルは安い。



とある日にかなりマニアックなブルックリンのリッチモンドヒル、リトルガイアナを訪れる。
ガイアナとは南米の北東側にあるギアナ三国のひとつ。
大国ブラジルとスペイン語圏の南米9ヵ国、アルゼンチン、チリ、ボリビア、ペルー、エクアドル、
コロンビア、ベネズエラ、パラグアイ、ウルグアイに比べて旅行者が少ない国であり、
英語圏のため雰囲気もラテンアメリカと異なる。
ガイアナ人はインドから移り住んだ人が圧倒的に多く、カリブ系の黒人も目立つ。
また中華系も中国料理店やスーパーをたくさん出している。
ラテン一色の他の南米諸国とまったく異なる世界である。
そんなガイアナ人が多く住む街がクイーンズのリッチモンドヒルにある。


クイーンズのJFK空港近く、ジャマイカ駅の西側、
Libertyアベニューの111〜130丁目がリトルガイアナと呼ばれており、
一見するとインド人に見えなくもないガイアナからの移民がベーカリーやカリブ風の食堂、
トロピカルな野菜を売るスーパーやサリー屋を営んでいる。
車からもれるカリビアン•ミュージックとインドポップのフュージョンも寒いニューヨークからかけ離れている。



ヒンドゥー寺院や色鮮やかなサリーにコロンブスじゃないけどインド人街に迷い込んだのではと誤解してしまいそう。
カリブ海の島国が西インド諸島と呼ばれるのはそもそもコロンブスが新大陸アメリカの存在を知らなかったことによる勘違いのためらしい。



せっかくなので7年前の南米一週中に訪れたガイアナを思い出すべくロティ•ショップに寄ってみる。
尚、ロティとはガイアナ人がカレーと食べるクレープのような生地であり、
インドのチャパティに限りなく近い。
マレーシアの印僑もカレーとロティを食べていた。


チキンカレーとポテトを注文し、もちろんロティも頼んで7ドル。


辛さのないカレー、甘いロティとあわせて、
ロティ•ショップのおばさんが喋る独特ななまりの英語がガイアナを思い出させてくれる。


まだまだ移民街廻りをしたいニューヨーク滞在だが、
長いようで短いプチ滞在も残り一週間ちょっととなった。







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2016年4月24日日曜日

ニューヨークの格安美術館廻り(2016年4月4日)

1ヶ月以上のニューヨーク滞在中、せっかくだから美術館を訪れてみる。
ロンドンのように完全無料美術館でないけれども、
特定の曜日の時間帯を利用すれば格安で見て廻れる。


ニューヨークで有名なメトロポリタン美術館や近代美術館(MoMA)。
フランクロイドライド設計によるグッゲンハイム美術館。
美術館の入館料そのものは安くない。
メトロポリタン美術館とMoMAは25ドル、グッゲンハイム美術館が22ドル。
とはいえ、メトロポリタン美術館のチケットカウンターに表示されている25ドルの下に小さく、
「recommended」と表記されている。
つまり寄付金みたいで任意であり、いくらでもいいシステムらしい。
実際にチケットカウンターに行くと、好きな金額でいいと係員に言われたので1ドル札で入館した。
コインを渡している人もいたし、無料でも良さそうだけれども、
「無料で」と係員に告げるのは恥ずかしいかもしれない。
またMoMAは毎週金曜日の午後4時〜8時まで入場無料だし、
グッゲンハイム美術館の17:45〜19:45の入館料もメトロポリタン美術館のように任意となっている。

まずはメトロポリタン美術館。
パリのルーブル、サンクトペテルブルクのエルミタージュと並んで世界三大美術館と言われるだけあって、
しかも常時任意料金なので平日なのに混んでいる。
年明け早々訪れたロンドンの大英博物館のようだ。


館内は広く、アメリカからヨーロッパの美術品、
日本、韓国、中国などのアジアや中東のイスラムアート、エジプトのコレクション、
中米やパプアニューギニアの美術品までもある。



当然すべてゆっくり見て廻ることなど不可能で興味あるものだけじっくり見る。
昨年訪れたイランのアートに懐かしさを感じ、早くもユーラシア大陸が恋しくなる。


多くの人が集まる絵画は有名なものが多い。



モネやゴッホの絵画もあり、ヨーロッパの絵画セクションだけで1時間以上過ごせそうだ。



巨大なメトロポリタン美術館だけあってエジプトの古代遺跡が再現されていたりと驚くばかり。


天井ガラスから陽光が差し込むオープンなスペースにも多くの彫像が飾られている。
短時間で世界中の映画を何本も見せつけられる感じで、許容量がパンクしてしまう。



金曜日の入館料無料時間午後4時前にMoMAへ。
なんと20分前に着いたときには長列が美術館入口のはるか遠くまで伸びており、
一瞬諦めて退散しようかと思ってしまう。
無料なのでチケットカウンターに並ぶ手間が省けるけれども、
入館できるまで長列で30分近く待たされた。
尚、美術館でのリュックの持ち込みは注意が必要。
予めクロークルームで預かってもらうか、背中ではなく腹で抱えることで直接持ち込むことが許される。
MoMAのクロークルームも恐ろしい長列なので係員に言われるまま前に抱えて入る。

あまり広くない館内は人で溢れ返っており、のんびりとアートを見ている余裕がないほど。
他人にぶつからないようにしつつ、人混みをかき分けて見て廻るという感じ。
25ドルの節約と思って我慢するしかない。



ゴッホが晩年に描いた絵がある周辺は写真を撮る人でごった返している。


でも、有名な絵を目の前で見れるのが素晴らしい。




モネの巨大な睡蓮の絵画は部屋1つを占めている。


せわしい時間への固執を実感させてくれるようなダリの作品に見入ってしまう。


入館してから3時間ちょっとのカオスのような無料時間はあっという間に過ぎていく。
映像や凡人の理解力では感じられないアートを見て廻った頃にはクタクタ。



日本の建築家、谷口吉生に設計された建物をゆっくり眺める余力も残っていなかった。




金土続けての美術館廻りは疲れるので、一週間おいてから土曜の17:45から入場料が任意になるグッゲンハイム美術館を訪れる。
土曜の遅い時間帯なのにMoMAほどでなくても混雑している。
前回の教訓をいかして30分くらい前から列に並んで待つ。
西日を浴びたフランクロイドライト設計の建物が際立っている。


チケットカウンターで1ドル払って入館。
何よりも螺旋状のグッゲンハイム美術館の造りに惹きつけられる。



螺旋状の構造になっているため上階に向かって登りながら順番に見ていけるので、
どの部屋から見ていこうかなど余計なことに神経を使う必要がない。


絵画が飾られている部屋もループになっており、人の流れもスムーズ。
有名な画家の作品をゆっくりと見て廻れる。



展示はそう多くないものの、遊び心があるものもあり、
楽しく見て廻れる美術館だと感じる。



確かに土曜日の無領事館のため尋常でない人混みだけど、
MoMAのように気にならないのはフランクロイドライト設計の建物のおかげかもしれない。



グッゲンハイム美術館は短い2時間を楽しめる空間だった。









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