2015年10月3日土曜日

トルクメニスタンのダルバザ、地獄の門へ(2015年9月15日)

トルクメニスタンにダルバザ、『地獄の門』と呼ばれる場所がある。
写真で見ると大地にぽっかりとあいた穴から炎が吹き出しているので、
火山口のマグマかと思っていた。
実際には天然ガスが溢れる洞窟で落盤事故が起こってしまい、
直径50〜100キロの穴が大地にあいてしまったという。
地中から絶え間なく放出される有毒ガスを食い止めるために点火することで、
穴から炎が延焼し続けるガスクレーターになったとウィキに書いてある。
最近、中央アジアを訪れる旅行者の間で有名で、
トルクメニスタンのハイライトである地獄の門をぜひこの目で見たい。
ウズベキスタンからトルクメニスタンに入国した初日にダルバザを訪れる。

トルクメニスタンのトランジットビザは5日間有効で入国日と出国日、入出国地点両方もビザに記載されている。
カザフスタンのアルマティで出会ったバンコク在住のまささん、
キルギスタンのビシュケクから一緒だったマキヨさんとアルマティの街を歩きながら
日程が合えば地獄の門を訪れようと話しあっていた。
特に旅程を合わせたわけではないのに3人のトルクメニスタン入りの日にちが近くなり、
入国日と出国日を同じにすることができた。
ただし自分とマキヨさんの入国地点はトルクメニスタンのDashoguz(ダシュホウズ)なのに、
いち早くビシュケクでトランジットビザを取得したまささんのビザにはkonye-urgench(クフナ•ウルゲンチ)と記載されている。
せっかく日程が同じなのにウズベキスタンを出国する国境が異なるのでどうしようと悩んでいたら、
まささんのビザ記載のクフナ•ウルゲンチは閉まっているとヒバ在住のJICAのミワさんに教えてもらい一安心。
閉まっているのだからダシュホウズへの国境越えしか手段がない。
二ヶ月前にカザフスタンのアルマティで一緒だったまささん、マキヨさんの3人でトルクメニスタンを抜けられる。

まずはヒバのAlibek B&Bでトルクメニスタン国境行きのタクシーを一台50000ソム(1300円)で手配してもらう。
1人400円ちょっとで宿からウズベキスタン出国口まで。
ヒバの旧市街北門近くから国境行きのバスもあるようだが、3人一緒で行動できる利点をいかす。
ちなみにウズベキスタンに入国した二週間前は1ドル=4600ソムだったが、
ウズベキスタン通貨が日々下落し、ヒバでは1ドル=4800ソムだった。

ヒバから国境まで1時間もかからない。
タクシーを降りてから国境のオフィスに歩いて行くと、西欧人のツアーバスが停まっていた。


ウズベキスタン側のイミグレでの出国手続きはスムーズ。
税関申請書を2度、3度書き直しさせられた以外に荷物チェックや現金チェックもなし。
出国窓口で宿泊先でその都度もらったレギストの紙切れを見せるように言われるものの、
じっくりは確認していない様子。
ホテルが閉鎖していたムイナクでホームステイしたのがばれなくてよかった。

ウズベキスタンとトルクメニスタンの長めの緩衝地帯は徒歩での横断禁止らしく、
警備員に呼ばれたバンで移動する。
もちろんタダではなくトルクメニスタン通貨の3マナト(100円)取られるので、
事前に旅仲間からマナトを両替してもらって助かった。
トルクメニスタンの入国手続きの建物内には先に見かけたツアー客が20人近くいる。
デンマークからのツアー客で地獄の門には寄らず、クフナ•ウルゲンチで遺跡を見てからアシュガバードに向かうという。
どういうわけか日本人びいきのイミグレ係員に自分ら3人を先に通してもらって入国手続き。
しかし外国人用のコンピューター•システムに不具合があるようで1時間半待たされることになった。
パスポートに入国スタンプを押してもらってからの税関での荷物チェックは
ウズベキスタン入国のiPhone、パソコンのすべての写真データチェックよりマシとはいえ、
バックパックの中身をすべて放り出し、4人の係員にいろいろいじられる羽目になる。
忍耐は必要。
黙々と係員のチェックを見届け、荷物をバックパックに整理して詰め込んだ。


とりあえず3人とも無事トルクメニスタン入国。
国境付近には両替商がいなく、国が変わっても押しが強いタクシードライバーと交渉。
トルクメニスタン初日の予定は日中にクフナ•ウルゲンチの遺跡を見て、
午後にダルバザに移動して、地獄の門を夕焼けを見に行くもの。
しかし、クフナ•ウルゲンチからダルバザまで270キロもあり予定通りにいくわけがなかった。

国境からクフナ•ウルゲンチへの料金は高いので近場の町ダシュホウズまで手配してもらう。
1人8マナト(260円)。
平坦な荒野の風景はウズベキスタンもトルクメニスタンも変わらない。
風景はダシュホウズの町に到着すると一気に変わった。
等間隔の街灯が多い整備された道路に白基調で同一された建物群。
緑色の衣装をまとい、帽子を被った三つ編みの女学生が街中にあふれ、異世界にたどり着いた感がある。
タクシーを降りて日本人バックパッカーが歩いて逆に人々から注目され写真を撮るようにお願いされたりする。
写真を撮りたいのはこちらなのに。


親切な女性に助けられて市場近くのスーパーでドルからトルクメニスタンマナトに両替。


ATMが使えないウズベキスタン同様、USドル紙幣がないとサバイバルできないトルクメニスタン。
市場で地獄の門前の最後の食事になるであろうサモサを食べてからクフナ•ウルゲンチ行きの交通を探す。


外国人が珍しいのか人々に見られながらダシュホウズを歩く。
通りすがりの人に教えてもらったシェアタクシー乗り場にたどり着くと、
一気にタクシードライバーの男どもに囲まれ、写真を撮れ撮れの嵐だった。
陽気な現地人との交流は楽しいものの、重いバックパックを背負っての炎天下だと疲れる。


半ば強引に荷物を持っていかれて1台のタクシーの乗り込む。
クフナ•ウルゲンチまで1人8マナト×3で1台24マナト(800円)で交渉する。
が、この強引なドライバーは曲者で、クフナ•ウルゲンチの遺跡に到着すると、
1人24マナト、しかも4人用のシェアタクシーだからと
24マナト×4人分で合計96マナト(3200円)も払えとふっかけてくる。
ダシュホウズで出会ったトルクメニスタン人の印象が良かっただけに残念な対応。
結局、遺跡近くにて英語を話させる家族連れにドライバーとコミュニケーションをとってもらい、
ダシュホウズからクフナ•ウルゲンチまでの標準料金という1人10マナトの4席分、
合計40マナトで手を打った。
でも害した気分はすぐにおさまらない。
クフナ•ウルゲンチの遺跡はブハラやヒバで世界遺産の建築を見た後はたいしたことなく、
写真を撮影するだけで21マナト(700円)も取られるので少しだけ見て去る。


周囲に何もない遺跡からダルバザまで先のぼったくりシェアタクシーに乗る気になれず、
クフナ•ウルゲンチのシェアタクシー乗り場まで流しのタクシーに乗り、
1人1マナトで連れて行ってもらう。
シェアタクシー乗り場では再び多くの男どもに囲まれ、
またまた金に汚そうなシェアタクシーのドライバーたちと交渉。
クフナ•ウルゲンチと首都アシュガバードのちょうど中間にある地獄の門。
一人当たりの料金がアシュガバード行きの50マナト(1600円)からまったく下がらない。
シェアタクシーは1席で料金が決まっており、
観光客しか訪れないであろうダルバザで乗客が拾えないそうなので断念するしかない。
すでに16時を過ぎており地獄の門での時間を短縮するわけにもいかず、
1人45マナト(1500円)に値切って自分ら3人、アシュガバードへ向かうおばさん1人とシェアする。
何かと料金交渉が疲れるトルクメニスタンである。



シェアタクシーは異様に電柱が多い幹線道路を進む。
天然ガスで電力を供給しているトルクメニスタンを垣間みれる。


途中道が悪かったりして順調に進むわけがなく、当初予定していた地獄の門での夕焼けは叶わず。
シェアタクシーから夕日をぼんやりと眺めつつ夜のダルバザに期待を抱く。



すでに日が暮れ、どうせなら夜遅く地獄の門に出発して朝日を見てから戻ろうと話がまとまる。
ちなみにダルバザには荷物を預かってくれるチャイハネがあるらしく、
旅行者はバックパックをチャイハネに預けて地獄の門を見に行ったり、
地獄の門からチャイハネに戻って泊まらせてもらうそうだ。

完全に闇に覆われた午後9時にシェアタクシーは一軒のチャイハネで停車する。
しぶしぶ1人45マナトを払ってドライバーとはお別れ。
このチャイハネに荷物を預けるだけのサービスはなく、1泊一人8ドルと言われる。
人を小馬鹿にしたような態度が悪い背の高い男が主人のチャイハネだった。
何よりも主人の子供が悪ガキで、幼児にも関わらずドライバーからの釣りを奪おうとしたり、
勝手に僕らのバッグを開けてお菓子を盗ろうとした。


主人やおばさんは幼児にまったく注意せず、子供だから仕方がないでしょ、みたいな感じで言う。
お菓子だけならともかくバックパックの中身も漁られそうなので一軒目のチャイハネは去り、
同じ幹線道路沿いの少し離れたチャイハネに歩いて向かった。


二軒目のチャイハネに着いて早々、外国人が珍しいのかスマホで写真を撮られまくる。
フレンドリーそうな女性たちが働いているチャイハネ。
いきなりの撮影会に少なからずほころんでしまう。


二軒目のチャイハネに宿泊できないようだが、荷物は無料で預かってくれるので申し分ない。
しかもダルバザでありつけないだろうと思っていた夕食を出してくてこれまでの疲労も和らぐ。
チャイ、パンとあわせて10マナト(330円)のペリメニはあつあつで地獄の門に向かう前の腹ごしらえに十分。


チャイハネで少し休息し、iPhoneのバッテリーを充電してもらってから23時過ぎに地獄の門へ歩いていく。
今晩は新月で上空にはおびただしい星がちりばめられている。
天の川さえくっきり見える。


逆に月明かりがないのでiPhoneのライトがライフライン。
懐中電灯なしで地獄の門まで砂漠を歩いて渡るのは不可能だろう。
チャイハネから6キロ以上あるのだから…。
尚、6キロも離れているのに西側の地平線に橙色の光が見える。
iPhoneのGPSを頼りにしつつ、空がオレンジ色に染まっている方向に進めばいずれたどり着けそうだ。


暗黒に沈んだ砂漠に道などなく、トゲトゲの乾燥植物に気をつけながらゆっくり歩いて行く。
サンダルから靴に履き替えて正解。
3人一緒だったから真っ暗闇の世界を歩いているものの、一人だったら怖じ気ついていたかもしれない。
まささんはサソリや蛇が出没しないか心配で落ち着かない様子。
砂漠は平坦ではなく、多少の丘陵があったり、乾燥植物が濃くなったり、
さらさらの砂地になったり、鉱石があらわになる固い地面に変わったりする。
30分も歩けば幹線道路沿いのチャイハネの明かりも見えなくなり、
三日月さえない夜空に満点の星が輝いている。
立ちすくんでぼんやりしていると、たまに流れ星が頭上を横切る。


360度暗黒世界と言ってみたいけれど、
前方でオレンジ色の閃光がほんのりと灯っているのがかえって現実離れしているように感じさせてくれる。


1時間ほど歩くと中間地点の線路が近づく。


が、線路の前には急勾配の砂丘が立ちはだかり、ちょっと足を踏み込むだけで砂が崩れて大変だった。
線路を越えてからも砂漠の丘陵が続いていく。
チャイハネから歩き始めて2時間近く経過すると、空の赤みもだいぶ近くなってくる。


そして、前触れもなく前方に湯気が見えたと思ったら、突如大地オレンジ色の割れ目が見えた。
一瞬ンオレンジ色の巨大な円盤に思えた。


3人ともテンション上がりまくりでゆっくりと近づいていく。
マグマが詰まった火山口のような穴が予想を遥かに超えて巨大なガスクレーターだと分かる。
一歩近づくたびに沸き上がる熱風が吹いてくる。


地中から放出される有毒ガスが燃焼していると言われているので淵まで行くのに躊躇してしまう。
いや、有毒でなくても大気が揺れて見える熱さ、柵など一切ない巨大な穴に足取りが遅くなる。
出来るだけ近くからのぞいてみると、巨大なクレーターの表面のあちこちで灼熱がグツグツと湧いていた。




目を凝らしてみると炎の付け根が透明な青色のようで、無数の炎が生き物のごとくうごめいている。


崖っぷちまで足を踏み入れて地盤がさらに崩れるのも怖いし、
過って体のバランスを崩しても終わりなので、iPhoneで反射させて見たりする。


ゴリラポッドを持ってきたのでまささん、マキヨさん、ガスクレーターとの記念撮影も忘れない。


それぞれの思い思いのポーズで写真撮影したり、自分もポーズを地獄の門にあわせて撮ってもらう。




気がついたら午前3時。
3人とも時間を忘れて地獄の門に見入る。
暗黒の世界をオレンジ色に染める強烈な炎の明るさ。
価値観を覆される光景についつい体が固まってしまう。


視点を変えるために近くの小さな岩山に登ってみる。
岩山は新月の星空をバックグラウンドにしてオレンジ色の灼熱によって照り映えていた。
地獄の門色に染まる光景は神秘的。


近くに停まっているキャンピングカーも火星に降り立った探知機のように見える。


岩山の頂上からは平坦な大地にぽっかりといあいたガスクレーターの様子が見渡せる。
これほど非現実的な光景は人生で見たことがあっただろうか。



岩山で軽食をとっていると自然の厳しさも思い知る。
午前4時過ぎの砂漠は気温が一気に下がり、ダウンジャケットを着ないと寒すぎる。
ダウンジャケットを来ても寒いくらいなので再び地獄の門の淵まで近づき、
穴から吹き上げる熱風で暖をとった。
地獄の門を眺める顔は熱いのに背中は冷風で寒く、体の感覚がおかしくなりそう。
3人とも疲れていて、ガスクレーターにほど近い場所に座り、夢うつつを味わう。
仮眠をとるには砂漠の温度下降が厳しいし、有毒ガスも体に悪そう。

午前6時頃、多少震えながら立ち上がると地獄の門の向こうに暁が見える。
もっとも地獄に近い場所なのに天国が近づいてくるようなトワイライトゾーン。



日の出を見るために先の岩山にまた登る。
じょじょに明るくなる東の空と相変わらず燃え続ける灼熱のコントラスト。
近場のキャンピングカーから人が現れる気配がない。


小高い場所から眺めると他にもキャンプしている西欧人の存在が分かり、
日の出前にようやく動き出していた。


地獄の門でのクライマックスは地平線からゆっくりと登っていく太陽に目を細めてしまう。
暗黒の中で燃え続けていた灼熱が蒸発してしまいそうな日の出。
地獄から天国への誘いのようでもあった。




太陽が完全に昇ってしまうと、夜中の地獄の門は幻想に思われてしまう。
また2時間以上かけて砂漠を歩きチャイハネに戻らなければならないのだろうか。
現実世界はやはり幻想とは異なる。




でも、幸運にもキャンピングガーを運転するフランス人に乗せてもらい、
チャイハネまで帰りの砂漠横断は免れた。







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