トルクメニスタンからカスピ海を船で渡れば、
グラデーション的にじわじわ変わってきた中央アジア諸国から一気にヨーロッパに。
ドバイの二番煎じくらいにしか予想していなかった首都バクーは斬新な高層ビルの建築ラッシュで、
油田のおかげでバブル真っ只中の空気が漂っている。
ベージュ色で統一された街並みのイルミネーションにパリやウィーン、ブダペストと遜色ない重厚な洗練さを感じた。
トルクメニスタンのトルクメバシからの船が到着したのはバクーでなく、
バクー南55キロの閑散とした港。
順番にイミグレでの入国手続きを終え、建物を出るとシャトルバスが停まっている。
建物にATMがあるので早速現地通貨のマナトをおろす。
国際キャッシュカードが使えなかったウズベキスタン、トルクメニスタンからやっと先進国にたどり着いた気分。
カフカスの旅を終えてイランに入るまでドル紙幣残高の心配はなさそう。
シャトルバスで港入口まで移動するとタクシードライバーに声をかけられる。
ジェスチャーによる料金交渉で2人で15マナト(1700円)と思っていたら、
降車時に1人15マナト請求された。
トルクメニスタンと同じく降車時に交渉料金を釣り上げられたのかもしれないし、
同乗の現地人も15マナト払っていたので自分の勘違いかもしれない。
市街に入る前に別のタクシーに乗換えてからもホテルの住所が分からないらしくかなり迂回し、
走行距離が長くなったからと追加料金を請求してきたり、
この近辺のタクシードライバーが質が悪い。
バクーに4日滞在する。
旧市街にほど近いBaku Palace Hotel&Hostelにチェックイン。
周辺にサロンやマッサージ店が多くいかがわしさが漂っているものの、
ホステル自体は清潔で内装も豪華。
ダイニングルームに隣接した開放ドミは13マナト(1500円)とお手頃。
ホステルと同時にホテルでもあるBaku Palaceなので朝食別料金で5マナトと高い。
それでもコーヒー、紅茶は常時飲み放題。
Wi-Fiもキルギスタンのビシュケク以来YouTubeが見れるほど満足のスピードだった。
アシュガバードからトルクメンバシまでの夜行列車、
トルクメンバシからアゼルバイジャンまでのフェリーでの疲労を解消すべく日中は引きこもり。
トルクメニスタンでネット環境ほぼ皆無だったこともあり、久しぶりにネットサーフィンに熱中し、
また地獄の門やアシュガバードも振り返った。
砂漠を歩いて地獄の門へ向かい、徹夜でガスクレーターを見入っていたのが遠い過去の出来事のようだ。
夕方から歩き出してすぐにカルチャーショックを受ける。
想像を遥かに越えたヨーロッパ風の街並、道行く人は皆ファッショナブル。
以前訪れた東欧のハンガリーやチェコの陰気もなく、
溢れる高級感と明るさにたじろいでしまいそう。
旧ソビエトっぽさが残る中央アジアからやってくると、
まるで田舎者のように浮いてしまう日本人バックパッカー。
二ヶ月半過ごした中央アジア諸国で見かけなかったファーストフード店と中国以来に再会。
トルクメニスタン〜アゼルバイジャンへの移動中たいしたものが食べれなかったので、
マックやKFCで文明の味を噛み締める。
これまでに体験したことがないほど車ばかりのバクーで車道横断は厳しい。
歩行者用の地下通路を利用する。
旧ソビエト風の中央アジアの都市でよく地下通路を上り下りするけれども、
エスカレーター、さらには動く歩道まで完備され、車椅子用の装置さえ目の当たりにするのは初めて。
フランスやドイツ、イタリアも嫉妬してしまいそうな超先進国ぶりである。
カスピ海に沿って整備された遊歩道があり、夕暮れ時の散歩にいい。
カスピ海からの風が涼しく、秋の空気を感じる。
潮風の香りがしないのは大きな湖だからだろう。
遊歩道を歩く若者、家族連れはモダンなファッションに身を包み、
通り過ぎるたびに強いコロンのフラグランスが鼻をつく。
トルコ人に近い濃い顔立ちの人々が多く、
またキルギスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンのような日本人に近いアジア系を見かけない。
綺麗でファッショナブルだけど上から目線に感じるアゼルバイジャン人にじろじろ見られながら
田舎者丸出しで遊歩道を歩いた。
遊歩道からバクーのシンボルとも言える斬新な高層ビル群が見える。
燃え上がる炎のようなデザインで、ウルトラモダンな油田都市のアイデンティティのようだ。
建設中のビル群も多く、発展し続けるバクーの加速度を見せつけられる。
これまで滞在した無味乾燥な中央アジアの都市ビシュケク、ドシャンベ、タシケントと異なり、
城塞に囲まれた世界遺産の旧市街を持つバクー。
暗く細い路地にプラハを思い浮かべてしまう。
数年ぶりのヨーロッパにテンションが上がっていなくても魅了されてしまうだろうバクーの旧市街の夜。
これまた洒落た情緒のある夜の石畳を歩きつつ、
オセアニアを含めてかれこれ1年11ヶ月滞在したアジアを舞台とした旅が終わり、
新たなるステージとしてヨーロッパに踏み込んだと実感した。
城塞に囲まれた旧市街から出ても目がくらむ新市街のイルミネーション。
日中ベージュ色で統一されていた街はシックにライトアップされている。
白く眩しくけばけばしいアシュガバードになかったグラマーな洗練度。
夜のパリやウィーンを歩く感覚に似ているかもしれない。
いきなり一目惚れしてしまったバクーの初日である。
ヒバで合流し、トルクメニスタン、カスピ海横断フェリーで一緒だったマキヨさんとバクーで一時的に別れる。
マキヨさんはバクー2泊して夜行列車でジョージア(旧グルジア)のトビリシへ。
自分は4泊してからトビリシへ。
今後のルートも似ているのでジョージア、アルメニア、イランでもちょくちょく再会するかもしれない。
日程は違うもののバクー鉄道駅にトビリシ行きのチケットを買いにいくと、
バクー20時半発トビリシ9時半着、3等寝台で21マナト(2400円)だった。
昼間の旧市街廻り。
カスピ海に似合った青い空の下、東欧のような夜の雰囲気と違い、
地中海的な明るさがある旧市街。
新市街の交通量から想像できない閑静な住宅街でもある。
足取りも自然とのんびりとなる。
小さな旧市街の後方にガラス張りの斬新なビルが見えるのがバクーらしい。
旧市街の土産屋を物色すると、中国のカシュガルやウズベキスタンのブハラ、ヒバで見たような絨毯、
ランプ、帽子ばかりでシルクロードの旅の続きに早くも懐かしくてにんまりする。
夕暮れ前に小高い丘に立つ炎型の3つの高層ビル、フレイムタワーを見に行く。
ベージュ色の建物に溶け込んだブティックの多さにいまだ馴れない。
ピカピカ輝くウィンドウは中央アジアに存在しなかったもの。
治安もかなりいいのかもしれない。
丘に沿ってジグザグに走る坂道を登っていくと、フレイムタワーがぐっと近くなる。
燃え上がる炎の形は原油による経済成長の象徴であり、
火を崇拝するゾロアスター教のシンボルでもあるそうだ。
丘に登りきり、真下から見上げると迫力がある。
周囲の建物を映しこむガラス張りがかっこいい。
トルコ風のモスクとのコントラストに目を引きつけられる。
丘の上には庭園があり、
庭園から広々とした展望台に上がってみると、カスピ海に沿ったバクーの街並を一望できる。
西日に染まるバクー。
婉曲するカスピ海、建築ラッシュの街並。
日没後、フレイムタワーのライトアップが始まる。
最新のテクノロジーで3本の高層ビルの色が変わっていく。
街灯と自動車のヘッドライトの軌跡で眩しいバクーの夜景を見ながら
列車チケットを購入していなければもう数日長居していたかもしれないと思った。
旅の舞台が中央アジアから一変してヨーロッパになったけれども、
アゼルバイジャンから再び旧ソビエト風のジョージア、アルメニア、
そして西アジアのイランへと向かう。
3ヵ国とも10年ぶりの再訪なので変貌が楽しみでもある。
もうちょっとアジアっぽい雑踏が残る国々を廻るので、洗練されたヨーロッパはひとまずお預け。
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