2017年7月15日土曜日

世界一高いところにある塩湖、天空の湖パンゴンを見る(2017年6月14日)

ラダックに天空の湖と呼ばれる世界一高い位置に広がる塩湖があるという。
インドが占めている部分が3分の1、チベット自治区が占めている部分が3分の2のパンゴン湖。
鮮やかな青さを持つというパンゴン湖をレーから1泊2日のツアーで訪れる。


パンゴン湖行きの公共バスは週数本あるそうだが、
途中の風景や湖を楽しむためには現実的でないのでレーでツアーを探す。
何軒か回ってみたところ、ジープのチャーター代自体は8600〜9000ルピーとあまり変わらない。
ジープ1台の料金をツアー参加者で割り、旅行会社に払うことになる。
それより重要なのがパンゴン湖での宿泊費。
観光客用の宿泊施設の多いSpangmikだと最低でも1000ルピー(1700円)、
とある旅行会社では2400ルピーと言われたりした。
ツアーそのものの料金が変わらなくても、ツアー参加メンバーとどこに宿泊するかで合計料金が大きく変わってくる。
どこで申し込むか迷っていたところ、立ち寄ってみたYak Travelsという旅行会社で翌々日出発のツアーに二人集まっており、
さらにもう一人の参加がほぼ確定しているという。
自分も参加すれば合計4人。
が、なぜかジープ台が一人2700ルピー(5000円)と高め。
というのは、たいていの観光客が一泊するSpangmikという場所でなく、
パンゴン湖のずっと東、外国人がアクセスできるギリギリのところにある村Merak(メラック)に宿泊するからだという。


宿代が高めのSpangmikと違い、メラックのホームステイだと食事込みで600ルピー(1000円)。
また、辺鄙な村のメラックは静かで、ゆっくりと湖を堪能するには良さそうだ。
Yak Travelsにてパンゴン湖1泊2日のツアーを申し込んだ。

尚、ラダックの辺鄙な場所を訪れるのにパーミットが必要。
外国人個人がパーミットを取得することはできず、
旅行会社にて何人か分まとめて申請してもらう必要がある。
事前に訪れた別の旅行会社で4日間有効のパーミット、7日間有効のパーミットどちらがいいかと聞かれ、
その時はまだパンゴン湖出発日を決めてなかったので7日間にして900ルピー払った。
後でYak Travelsで尋ねると4日間で600ルピー、
7日間で650ルピーだったのでかなりぼったくられたことになる。


ツアー初日。
1泊2日なのでシャワーを浴びる必要なし。
そもそもラダックに入って以来レーでもバケツに汲んだお湯の行水なので、
辺鄙な村メラックで快適なバスルームは期待できないだろう。
リュックに防寒用の手袋や帽子、カメラ、ゴリラポッド、予備のカメラバッテリーやスマホのモバイルバッテリーだけ入れ、
残りはすべてバックパックに詰めて宿泊していたChowゲストハウスに預かってもらう。
軽量で参加するワイルドなツアーは2年前のモンゴルのゴビ砂漠ツアー以来。
ゴビ砂漠の場合、7泊8日で宿泊施設は大草原や荒野のゲルのみ、水、電気、トイレなどなく、
ツアー中立ち寄った町で公共シャワーを一回浴びただけ、
スマホやカメラのバッテリー充電も一度立ち寄った町の食堂で1時間ちょっと借りただけ、
とスケールの違う過酷なツアーだったが。

午前8時に旅行会社の前で待っていると、バックパックを背負ったフランス人女性アドリアンが現れる。
前日ツアー申し込み時に会っており、現在フランスで勉強している30代くらいの女性。
これまで10年間フランスから離れてデリーのフランス大使館で働いたり、南米であちこちに住んだり、
オーストラリアでワーホリしたりとあちこち回っており、気が合った。
やがてチベット系のドライバーが現れ、あとの二人を迎えに行くという。
その二人はレーの仏教学校で教えているという中年のフランス人ヤームとネパール人。
ヤームはかれこれインドに20年住んでおり、ヒンドゥー語は流暢、
しゃべる英語もインド人みたいにヒンドゥー訛りだった。
残念ながらネパール人は英語をほとんど話せず、会話はヤームに翻訳してもらう。

ドライバーに助手席を案内され、フロントガラスから絶景を眺められるのが嬉しい。
助手席は進行方向左手であり、パンゴン湖に沿って走る道路で常に湖に向いている。
レーを出発して早々晴れているのも幸先がいい。
毎日見ても飽きないヒマラヤが車窓を流れていく。


1時間くらい走ったところでチェックポイントがあり、
パスポートとパーミットのコピーをドライバーに渡す。
旅行会社にパーミットのコピーは5枚必要と言われたが、実際ツアー中に2枚渡した。


家屋が密集する岩山の頂上に立つゴンパを通過していく。
ラダック版のモンサンミシェルのようだ。


パンゴン湖への道路はインド人観光客を乗せた車、ブームなのか隊列を組んだバイクが多い。


雄大な渓谷と雪化粧の山々にツアー始まって間もないときから高揚感が湧く。
パンゴン湖へのツアーは移動そのものもハイライトのひとつで、
途中世界で二番目に高いところにある自動車道、チャンラ峠を越えていくらしい。


チャンラ峠に向かって一気にジグザグ道を登っていく。
渓谷の村が遠くなり、白い雲が一気に近くなる。


標高4500mから5000mの山道へ。
カシミール、ラダックとずっと3000m越えの山道ばかりだったけど、
これほど標高の高い場所を走るのは今回が初めて。


雪山がかつてないほど目前に迫ってくる。



ただの移動手段としてのジープでなくツアー利用のジープなので、
その都度見晴らしのいいところで車を止めてもらい、メンバ−4人が外に出て写真撮影。
天空世界を走る車はCMの一場面のようだ。


軍用車両の隊列が来ると、足止めを食らってしまう狭い山道。



やがて5000mに突入。


標高5000mの峠道はこれまでと別世界。
いつの間にか雪が下の方まで覆われている。


雲と雪山があまりにも近い天空の絶景が続く。


日本一の富士山よりはるか高い世界でも車が走っているのが不思議だ。


午前8時半頃レーの町を発ち、正午前にチャンラ峠に到着。
なんと標高5360m。
世界の自動車道で二番目に高い位置にあるそうだ。
ちなみに一番はラダックのヌブラ渓谷にある。



チャンラ峠の休憩所はインド人観光客が多く、
おそらく人生で初めて雪を触るインド人が老若男女かまわずはしゃしでいる。
多くのインド人が入れ替わり記念撮影をしているモニュメントで犬が我関せずくつろいでいる。
犬の視線の先には崇高すぎる頂。



25ルピーもするぼったくり金額のチャイを雪の上に置きながらすすって出発。


チャンラ峠を越えても標高5000mの理解不能の世界が続く。
山道を挟む積雪の壁は車の屋根より高い。


軍用バスもゆっくり進んでいるが、ハンドルを誤ったり、
雪道に滑ったら一貫の終わりである。


と思っていたら、すでに5000mの山道から転げ落ち、
黒いガラクタと化した車が眼下に見えた。
まるでトラックの墓場のようだ。
運転していたドライバーはまさか助かるはずもなく、
崖下で白骨化としているか、凍結されたままなのだろう。


ツアーのドライバーはそんなトラックに見向きもせず、
快調にジグザク道を進んでいく。
でこぼこ道の振動は助手席に座ってシートベルトを締めているのであまり感じない。
後席の3人がジャンプしながら叫んでいる中、フロントガラスの絶景に食いつく。



風景は峠道からガラリと変わり、
丈の短い草木が生える高原に突入していく。
両脇を6000m級の山脈囲まれた、現実世界から隔離されたような高原。


山からの雪解け水で育った草木を食べるヤクの群れが遠くに見える。


ジープを止めて緑がふさふさしている高原を歩いてみると蛇行した小川が流れているのに気づく。
恐ろしく澄んだ綺麗な水が流れている。


トイレ休憩がてら岩山から止まっている車の方向を眺める。
最初は雲が山々を包んでいると思ったが、
どうやら雨が近づいている。


雨が降り出し、一気に灰色の世界になる。
チャンラ峠からだいぶ降りたとはいえ、まだ標高4800m。
冷たい雨がときどき粉雪に変わったりする。


しばらく走ると雨降る高原を抜け、再びジグザグの山道となる。
青空が現れ、視線の高さを雲が流れる。
周囲の景色はこれまで以上に素晴らしいもの。
フランス人のアドリアンがこんな美しい景色フランスでも見たことなく泣きそうと感嘆している。


車を止めてもらい、見渡す限り360度6000m級の雪化粧の頂と緩やかな傾斜に囲まれた渓谷に見とれる。


他のメンバーのようについつい記念写真を撮ってもらう。


ジープはジグザク道を下り、標高をじょじょに下げていく。
軍用車両が集まる駐屯地のような場所を抜け、
男に車を止められてパンゴン湖の入場料10ルピーを払う。
いよいよラダックのハイライトのひとつ天空の湖が近づいてくる。



先と同様、丈の短い草原に入っていく。
黒い点がしだいに大きくなり、ヤクの群れが目の前に現れる。
チベット高原固有のヤクはラダックにも生息しているらしい。



今度はヤクとは違う茶色の点が見えてくる。


不思議と地面は草原から灰色の砂で覆われた砂漠のようになってきた。
起伏に富んだ場所もあり、小さな砂丘のようになっている。
パンゴン湖に向けてインド人観光客も多くなり、砂丘で例のごとく写真を撮っている連中も多い。
茶色の点は野生の馬のようで、馬たちは灰色の砂漠からわずかな緑を探して食べている。


そして、不意に現れる。
天空の湖パンゴン。
ドライバーも待っていたかのように車を止めてくれる。


残念ながらまた雲が多くなり、期待していた真っ青ではないものの、
茶色の地表ばかりの中、一部だけ不自然なほど青い。
ジープがここで停車してくれたのは当然で、
最初にパンゴン湖が視界に入るスポットらしい。


山道を下っていき、ついにパンゴンの湖畔へ。
世界で一番高いところにある塩湖、4250mのパンゴン湖。


確かに青っぽいし、さざ波以外に湖面を乱すものがなく、
透明度もある湖だけれども、灰色の空の下だから期待していたほどの感激は湧いてこない。
この程度の湖なら北海道でも見れそう、なんて罰当たりなことを思ってしまう。


ちなみにパンゴン湖は数年前『3 Idiots』というインド映画のクライマックスシーンに使われて以来、
異様なほどインド人観光客が訪れるようになったらしく、
ラダックのさらに辺鄙な場所にあるにもかかわらず聖地巡礼、いやロケ地巡礼に訪れる下界からの俗なインド人が後を絶たないそうだ。
正直、興ざめになるほど映画のシーンに重ねて写真を撮るインド人が溢れている。


映画を観ていれば感銘を受けるのかもしれないが、
ラダックの秘境にある天空の湖を期待してここまで来た外国人にしてみたら
テーマパークのような湖畔に失望せざるをえない。



空に青さが戻ってきた。
観光客で賑わう湖畔から離れた場所にある仏塔の先に人間がちっぽけの存在に思えるのような壮大な大自然が広がっている。


湖面に陽光が当たるまで時間がかかりそうなので午後3時の昼飯を食べて待つ。
言うまでもなく観光地と化した湖畔に用意されたレストランはぼったくり料金。
普通の野菜モモで140(250円)ルピーもした。



食事が終わる頃には湖面に陽光が差し込んでおり、
先ほどの普通の湖とはまったくの別物に変わっていた。
これまで見てきたどの湖よりも青い。
絵の具のパレットのような青さに現実感が抱けない。


標高5〜6000mの山々に囲まれた海のごとく青いパンゴン湖はまさに天空の湖にふさわしい。
灰色の空の下で見た30分前の北海道にありそうな湖とのギャップにテンションも高くなる。


映画のロケ地ということでインド人観光客が集っていた湖入り口を離れると、
周囲は静寂に包まれ、人間臭さと無縁な自然に戻っていく。
ドライバーと外国人4人を乗せたジープは湖を縁取るような道路を進んでいく。
雲が途切れ、青空いっぱい映し込んだパンゴンは美しすぎた。
ちょっとした高い道路から見下ろす湖面に言葉を失う。
あまりにも透明で、自然界が作り出したものと信じられない青さ。
地中海やカリブ海も青かったが、パンゴン湖の鮮やかすぎる多さは世界中の海を越えていると言っても過言でない。


どうやらこの世はここパンゴン湖で終わりらしい。
三途の川みたいに石が積み重なねられている湖畔にたどり着く。
細長いパンゴン湖の先は外国人立ち入り禁止区域、
ずっと先にあるのは中国領チベット自治区。


ちなみにレーで出会った中国人旅行者から聞いたところ、
中国人はパンゴン湖を訪れるためのパーミットが下りないそうだ。
パンゴン湖を抜けてインドから中国への越境が叶うはずがない。


パンゴン湖は雨や雪解け水によって水位が変わるかどうか分からないが、
湖畔に沿って湖水が水たまりのように溜まっている。
大小様々な水たまりが道路に沿って続き、微動たりともしない水面に周囲の山々が映っている。



鏡張りを見るとついついはしゃいでしまうのはどこの国も同じらしい。
メンバーのフランス人もネパール人も離れ湖水で写真を撮りまくり。



絶景といえばここ数年鏡張りのウユニ塩湖が人気すぎるけれども、
ウユニ世界一とのたまう人々を黙らすような奇跡のパンゴン湖。


すでに午後5時近く。
パンゴン湖ツアーで訪れる観光客の多くが宿泊するSpangmikを通過してジープはさらに湖の奥へ。
なお、Spangmikはまるで観光客の難民キャンプか強制収容所のように無数にキャンプサイトが密集しており、
とても静かな湖を満喫できるような環境に思えなかった。
ドライバーによると映画の前はインド人観光客が少ない静かな秘境だったようだ。
映画の影響とは恐ろしいものだ。
Spangmikを過ぎると道路を走る車の数は一気に減り、辺境の雰囲気が漂っていくる。
湖の向こう側、つまりチベット自治区側は晴れているのに、
インド側で雨が降っているという現実離れした光景も目の当たりにできる。


ようやく人里離れたメラックの村に到着。
すでに太陽が隠れてしまい、寒々しくて風が強く辺境にふさわしい世界。
メラックから先は外国人がアクセスできない地域で、本場チベットはすぐ近く。
宿泊させてもらう朝晩飯付きで600ルピーのホームステイはいたってシンプル。
水は汲み水だけど電気は通っており、モンゴルの移動式住居のゲルより立派なのは言うまでもない。


湖畔にあるホームステイ。
太陽が消えてしまうと青さが微塵もない不思議なパンゴン湖で夜を迎える。


それでも日の入り時刻の直前になると雲が消え、
かすかに残照を浴びた白い山々の頂が幻想的でもあった。


ホームステイでの夕食は簡素な豆カレーとヨーグルト、ご飯だけ。
メインの豆カレーの量が少なく、ご飯とヨーグルトを絡めて食べる食事は美味しいから程遠かった。
急激に気温が下がり、震えながら外に出ると満点な空が広がっていた。


標高4250mにあるパンゴン湖。
間違いなく人生で最も高いところで過ごす夜となった。


ツアー二日目。
昨日のルートをただ戻るだけ。
寝坊ばかりの自分が気合を入れて早めに起きる。
日の出時刻の午前5時は曇っており、もう一寝入りして6時にホームステイから出る。
雲がゆっくりとはけてきて、山の頂が明るくなっている。


湖側はまだ雲に包まれており、
昨日の青さが幻だったかのような静かで灰色の湖面。


それでも、微動たりしない離れ湖水に映る早朝の山岳風景は神秘的でもある。


早朝のメラックの村を歩いてみる。
犬もいない村は閑静そのもの、人の気配が感じられない。
雲が上空をゆっくりと流れ、雪山が完全に姿を現わす。


壮大な景色に朝から癒され、ちょっと小高い場所にあるゴンパを目指す。


家からひょっこり顔をだす村の子供達に挨拶しながらゴンパへ。
ゴンパそのものは小さい。
ゴンパにたどり着いた時には頂が雲に隠れ始める。


同時にかすかに湖畔に朝日が差し込む。
灰色だった朝のパンゴン湖が青く染まっている。


絵の具を垂らしたような青さは瞬間的だったけれども、
早朝から素晴らしいものを見るといい1日になりそうだ。

ロティとダルの朝食を終え、9時前にホームステイを去る。
おばさんとドライバーと家の前でお別れ。
冬になるとマイナス30度になり、道が閉ざされるという過酷な湖畔に住むおばさんがすごい。


メラックを発って間もなくは晴れている。
陽光を浴びればやはり鮮やかな青さを持つパンゴン。


抜群な透明度と青さに昨年マルタ島で見た地中海やメキシコやキューバ、
カリブ海諸国で見てきたカリブ海と比べてしまう。


残念ながらまもなく雲が多くなり、青さが蒸発してしまう湖。
惹きつけられるように見入った鮮やかな青さが最後となった。


天候は一気に崩れ、
チャンラ峠に近づくにつれて降雪が多くなり、視界も悪い二日目となった。


メンバーも感嘆の連続の初日にエネルギーを使い果たしてしまい、
ネパール人は居眠りしているし、アドリアンは今頃になって高山病に苦しんでいた。
天空の湖から現実の世界へゆっくりと戻っていく。



















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