旅行者に知れ渡っていないタイの秘島はまだまだありそう。
リペ島の次はちょこっと北上し、クラビーやプーケットより南にあるトラン周辺の島々を廻る。
タイ人の奥さんを持つシンガポール人Patに教えてもらったリペ島は満足。
タイ最後の秘島と言われているだけあって、モルディブ旅行の後でも魅了されてしまう海の透明度だった。
今回タイ南部の島々を廻るにあたって過去に訪れたメジャーなリゾートアイランドは避けようと思っている。
2002年と2011年に訪れたプーケット、ピーピー島、
2005年のユーラシア大陸横断旅行後半に立ち寄ったサムイ島とパンガン島、
そして昨年堪能したタオ島と隣接したナンユアン島。
急速なリゾート開発によりすでに見た有名な島々に再訪しても最初のインパクトは超えられないだろうし、
世界中から観光客が押し寄せるタイのリゾートの物価上昇も激しい。
何度も旅行しているタイなのでたまには未知のものにも触れたい。
というわけで、シンガポールで出会ったPatやバンコクに住むタイの友人に一番綺麗な海を持つタイの島を尋ねた。
もちろん、誰一人してして知名度の高いリゾートアイランドの名前を挙げることはなかった。
リペ島の後はバンコクに住む昔ながらの友人が外国人にまだ知れ渡っていない海洋国立公園を勧めてくれた。
そこがトラン沖の手つかずの自然が残るチャオマイ国立公園。
リペ島に比べてネット情報も少なく、
手元の東南アジアのロンリープラネットでは2ページしか記載されていない。
しかも、どの島のリゾートも安くないし、島一つを選択するのも難しい。
そこでシンガポールからのモルディブ旅行の教訓をいかす。
一つの島に数泊するのではなく、ローカルな一ヶ所を拠点とする日帰り旅行。
トラン周辺の島々への日帰りの拠点は迷わずローカルな街トラン。
トランはタイの普通の街なので宿は安く、リペ島と違い屋台が溢れているはず。
波が高い海で何度も水しぶきを浴びながらリペ島からパクバラに戻る。
パクバラ港からトランへミニバスで直行。
西欧人10人以上がすし詰め状態のミニバンでトランまで2時間弱かかった。
案外すでに外国人に知れ渡っているのだろうかと疑問に思うのも束の間、
トランでミニバンを降りたのは自分とスウェーデン人のカップルだけで、
残りの西欧人はそのままクラビーに行くようだ。
一緒に降りたカップルはスウェーデン人御用たちのランタ島への乗継ぎ。
つまりトランに滞在するのは自分だけだった。
早くもリペ島以上の秘島感が漂っている。
トランで拠点となる宿はKotheng Hotel。
バックパッカーズと書かれているだけあって安宿で、
200バーツ(750円)の広々とした部屋は申し分がない。
ペンキが塗り立てのようで清潔感が漂っている。
でもよく見ると、蜘蛛の巣がかかっていたり、椅子に埃が被っていたりと古めかしい。
残念ながらWi-Fiはなく、改装中なのかトランの2日間他の宿泊客を見かけることはなかった。
トランの町は小さな駅があり、時計台があり、市場がある、
いかにもタイの小さな町。
駅前に数軒並ぶ旅行会社で日帰り旅行について尋ねてみると、
トラン沖の4島廻りシュノーケリングツアーが700バーツ。
恥ずかしながら泳げない人間にとってシュノーケリングがない方がありがたいけれども、
他の旅行会社でも4島廻りシュノーケリングツアーのみとバリエーションがないので申し込む。
昨年カンボジアのロン島でライフジャケット着用で浮くことができたし、シュノーケリングはなんとかなるだろう。
それよりも問題はツアーに含まれているエメラルドの洞窟。
旅行会社のおばさんによるとエメラルドの洞窟はイタリアの青の洞窟のように海水に侵食された海食洞らしい。
カプリ島をかつて旅行したとき好天にもかかわらず青の洞窟に入れなかったので、エメラルドの洞窟はぜひ行きたい。
さらにエメラルドの海食洞を貫通したクライマックスにはエメラルド•ラグーンが待っているらしい。
地図で拡大してみてみると、『紅の豚』のポルコの隠れ家のようだ。
が、天井が海面スレスレなため小舟でのアプローチは出来ず、泳がずにはたどり着けない。
旅行会社のおばさんで泳げないことを告げると、
ガイドが引いてくれるので大丈夫と笑っていたが果たして…。
当日は残念ながら曇り模様。
テンションが朝から下がってしまうが申し込んだツアーは変更できない。
ツアーの詳細は聞き忘れたものの、
Ko Muk(ムック島)、Ko Ngai(ンガイ島)、Ko Kradan(クラダン島)を廻ると思われる。
タイにしては珍しく西欧人がいないミニバスでパクメン港へ。
ミニバンを降りて早々、タイ人で賑わうツアー待ち合い場所に案内される。
なぜかピンク色を重要視するツアー会社らしく、
係員の上着やプラスチックの椅子がすべてピンクだった。
周囲にはタイ人しかいない。
外国人に知れ渡っていないのは本当かもしれない。
周りの様子をうかがっていると、泳ぎながら着用できる防水バックがレンタルできるようで、
100バーツのデポジットを払って一眼レフカメラどころかリュックそのまま入る防水バックを借りた。
エメラルドの洞窟に行く際にこれは便利そうだ。
周囲の目を気にしつつタイ人オンリーのツアー団体についていく。
桟橋の向こうにはタイらしいカルスト地形が見える。
干潮時だからか海底が剝き出しになっている。
その中で外国人は自分1人。
ガイドの兄さんはタイ語だけで説明し、一区切りついたら自分に英語で一言二言教えてくれる。
皆がガイドの話に笑っていてもなんで笑っているか分からず、
自らiPhoneのマップで島の位置関係を確認する。
船は穏やかな海をゆっくりと進んでいる。
太陽がまだ顔を出していないのが惜しい。
泳げない自分は真剣にジェスチャーから学ぶ。
カルスト地形のムック島の断崖絶壁そばで船は停泊してシュノーケリングタイム。
ムック島の形といい、シュノーケリングの場所といい、
プーケットから無人島のピーピーレーへのツアーを再現されたような錯覚に陥る。
つららのように垂れ下がる岩、断崖にあいた洞窟、波の音が響く海面まで迫った岩肌…。
やはりシュノーケリングは泳げなくてもライフジャケットで浮き、
マスクで呼吸できるので問題なし。
残念ながら目も悪い人間にとって水中マスクから見える魚はぼやけていたが。
60人超えているかもしれない大グループにおいて30分のシュノーケリングタイムはあっという間だった。
ちょっと移動すると人にぶつかり、慎重にシュノーケリングしている余裕はない。
再び船に乗り込んでからはムック島西側にあるエメラルドの洞窟へ。
このツアーの目玉であり、泳げない人間にとって一番の不安要素。
小舟すら通れない海食洞を泳いで貫通しないとたどり着けないエメラルド•ラグーンは秘島の中の秘境といった感じ。
ゆっくりと進む船からムック島の外観を眺めつつ、ガイドの話している姿に注目する。
エメラルドの洞窟の入口近くで停泊。
先の不安はすでに一掃されていた。
自分みたいに泳げないタイ人ばかりのツアー。
60人近くの団体の中に頭にスカーフを巻いた小学生グループ、幼稚園くらいの子供も含まれる。
そもそも天井の岩肌が海面すれすれのエメラルドの洞窟は80メートルもあり、
途中光がまったく差し込まない暗黒になるので懐中電灯を持ったガイドに引率されながら進むという。
前の人のジャケットをしっかりとつかみ、60人がムカデ人間になって海食洞を貫通する。
はたから見れば滑稽だろうが、泳げない自分が眼鏡をかけたまま
カメラを防水バッッグに入れてエメラルドラグーンを見に行くにはベストな方法にちがいない。
眼鏡に水しぶきがかからないようにゆっくりと海水に浸かり、前のおじさんのジャケットをしっかりとつかむ。
後の女性も自分のジャケットをつかんでいる。
あまりにも長いムカデ人間はゆっくりとエメラルドの洞窟に進んでいく。
両手でジャケットをつかまなくてはならないので当然カメラやスマホを出している人はいない。
そんなムカデ人間を笑いながらカヌーで現れた西洋人が写真を撮り、
彼らはヘッドライドを着用し、セルフィー棒に水中カメラを取り付けて悠々と泳いでいく。
やはり泳げる人はうらやましい。
洞窟に入ると、中は思っていた以上に広かった。
太陽が出ていないのに洞窟から差し込む明かりで天井の岩肌はエメラルド色に染まっている。
足先まで見える透明な海水はエメラルドのプールである。
あまりにも幻想的な光景に前の人のジャケットをつかんだまま足を動かして泳いでいるふりをしてみる。
高揚感を撮影する術がないのが残念でならない。
やがて洞窟の内部へと進んでいく。
エメラルドの明かりはフェイドアウトし、完全なる闇がやってくる。
はるか前方にガイドのにいさんの懐中電灯の閃光がちらついている。
天井も海面も見えない暗闇の中で若者や小学生はキャーキャーはしゃいでいる。
真っ暗な洞窟で大声を出してこだまを楽しむのはどこの若者も同じ。
それにしても60人近いムカデ人間を先頭のガイドはどうやって引っ張りながら泳いでいるのだろう。
誤ってジャケットをつかんでいる手を離してしまったら、暗黒世界で迷子になってしまいそうで怖い。
ときどき頭上すれすれまで岩が迫ってくるので、頭をぶつけないようにしなければならない。
閉所恐怖症の人には立ち入り禁止のエメラルドの洞窟。
そして不意に光が差し込み、洞窟の出口が見える。
白濁したエメラルドの海面も見えるようになり、80メートルの海食洞貫通も終わり。
洞窟を出てまもなく、足が水底に着き、前の人のジャケットから手を離す。
ムカデ人間が徐々に解体し、団体ツアーの群集がエメラルドラグーンに押し寄せる。
自分ら以外のツアー団体の先客もいてやかましく、ジャケットを来たタイ人で溢れ返ったエメラルドラグーン。
それでも断崖絶壁に囲まれた小さなビーチは『紅の豚』の舞台のようだ。
丸く切り取られた頭上の空が青ければもっと素晴らしかっただろう。
防水バッグをビーチに置き、ようやくカメラを取り出した。
エメラルドの洞窟を眺めているとさらに別のツアー団体のムカデ人間が現れ、
秘境を期待して訪れた西欧人はびっくりしている様子。
カヌーに乗って退散している。
ポルコの隠れ家らしからぬ混雑ぶりはおいておいて、
ムック島の内部にエメラルドの洞窟からしかアクセスできない孤立したビーチがあるなんて驚愕だった。
ガイドのにいさんのフエが鳴り、再びムカデ人間を形成して来た洞窟を引き返した。
戻る際に見たエメラルドの岩肌とエメラルドにプールに密閉された空間は現実にはない光景で、
ツアーでなければずっと浮遊して眺めていたかった。
船内でのランチを挟み、ムック島からクラダン島へ。
タイ人向けのツアーだけあって本格的なタイ料理はうまい。
ランチタイム後はクラダン島のパラダイスビーチにて休憩タイム。
閑静なパラダイスビーチは自分らのツアー団体や他のツアー団体が押し寄せ、
エメラルド•ラグーン同様カオスになる。
ちょこっと現れた太陽もすぐに雲に隠れ、遠方では雨が降っているようだった。
モルディブやリペ島ではずっと晴れていたのにトランでは運が悪い。
海水の透明度は2日前のリペ島並みで、空が青ければきっと綺麗なのだろう。
クラダン島のパラダイスビーチを午後2時に発つ。
他の団体ツアー船と同じルートでクラダン島からンガイ島に向かっている様子。
船に乗ってまもなく再び太陽光が差し込んできたのが憎い。
途中ピーピーレーのようなカルスト地形の小さな島々を通り過ぎていく。
海のレベルはトラン周辺の方が遥かに上だが、海からぽこぽこ岩が突き出ている光景はベトナムのハロン湾を思わせる。
船はンガイ島近くの小さな島、チャウアック島近くでエンジンを緩める。
ガイドの兄さんによるとここで最後のシュノーケリングタイム。
悔いを残さないように最後までシュノーケリングも楽しむ。
熱帯魚がうじゃうじゃ泳いでおり、熱帯魚以上にいつのまにか3隻になった団体ツアーのタイ人もうじゃうじゃ戯れている。
船内でのサービスはランチ以外にもドリンクやお菓子、フルーツがあり満足だった。
トラン沖の4島廻りのシュノーケリングツアーの4島目、ンガイ島。
ンガイ島では自由時間などがなく、リゾートに宿泊する数名を降ろして終わり。
皮肉にも陽光が強くなった夕暮れ前に無人島を眺めながらパクメン港に戻った。
ツアーのラストは多くの人々が眠り込む静かな航海になった。
これでタイの秘島廻りは終わり、翌日には観光パラダイスのプーケットに近いクラビーに向かう。
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