地中海は大きい。
フランス、スペイン南部、イタリアの沿岸部は地中海だし、
バルカン半島やギリシャの島々も地中海に囲まれている。
東側のレバノン、エジプトも地中海に面しており、
2週間前のモロッコ北部でさえ地中海を見た。
そして、アフリカ大陸最北端の国チュニジアでも地中海岸に寄ってみる。
内陸部のカイルアンから地中海リゾートのスースへ。
カイルアンのバスステーション近くのルアージュ乗り場から
乗客8人集まり満席になれば出発するルアージュに乗りわずか1時間でスースに到着する。
短距離だけあって4.7ディナール(280円)と安い。
ルアージュ乗り場から街の中心は2キロ以上離れており、
30分近く歩いてスースのメディナにたどり着く。
カイルアンに比べてスークが賑やかで人通りも多いメディナだが、ここも世界遺産。
やはり観光客や外国人をほとんど見かけないスースである。
モロッコから飛び込みの宿探しばかりだったけど、
今回はbooking.comでホテルを予約しておいた。
コスパの高い宿が少ないチュニジアで快適なホテル•メディナ。
広々とした部屋で32ディナール(1800円)だった。
安宿と違い、バスタオルやシャンプーが備え付けてあったり、
毎日部屋のクリーニングがあったりと真っ当なホテルである。
来週から再び物価高のヨーロッパに戻り、ドミトリー滞在が続くので居心地いいホテルで寛いでおく。
モロッコから見馴れてきた城壁に囲まれた旧市街だからか
世界遺産に登録されているスースのメディナにあまり高揚感が湧かない。
白い壁に青い窓枠、ドアの町並みもシディブサイドやカイルアンに見劣りしてしまう。
絵に描かれているようなアフリカっぽい雰囲気は薄く、
衣服などの日用品を売る商店がメインの路地を埋めている。
それでもメディナ奥部は生活臭が漂っており、
閑静な路地をぶらつくのは北アフリカの旅の日課のようになってきたが悪くない。
城壁沿いを歩いていると少なからず世界遺産の魅力を実感できる。
観光客がまったくいないのが奇妙なチュニジアである。
石造りのミナレットは既視感がある。
今回の世界周遊において中国のウルムチでイスラム世界に突入し、
ウルムチの二道橋にて重厚なミナレットを初めて見た。
それはウズベキスタンのブハラにあるもののレプリカであり、
シルクロードの重要地点のサマルカンド、ブハラ、ヒバでも多くのミナレットを目にしてきた。
さらにイラン、イスタンブールとモスクの尖塔を見ない日はなかった気がする。
ここチュニジアを発てば昨年夏から続いてきたイスラム世界にピリオドが打たれる。
同時に中国の西安からのシルクロードの旅はチュニジアからマルタに飛び、
マルタからミラノの飛び、ミラノから列車でベネチアに移動して終着する。
スースはリゾート地だけあって世界遺産のメディナより地中海の方が目立っている。
オフシーズンの2月で泳いでいる人はいないものの、
地元のチュニジア人も戯れている。
ちょっと波はあるけれど透明度が高く、
ヨーロッパで今まで見た青い地中海と遜色がない。
潰れてしまったかのか廃墟となったホテルが場末なリゾートを思わせる。
海水は綺麗だけれども砂浜にゴミが多く、男どもがビールを飲んで酔っ払っていたりと明るい雰囲気がなかった。
スースに2日間滞在後、ジェルバ島に南下する。
チュニジアに島があるとは想像すらできない。
でも、ケニアにラム島があり、タンザニアにザンジバル島があるようにきっと魅力的な島だと期待したい。
乗り換えが必要なルアージュでなく、スースのバスステーションからの直行バスに乗る。
スース〜ジェルバ間は1日一本のみの運行で午前10時半発。
ちなみにジェルバのフームスーク発スース行きは午前6時発。
モロッコのように前日予約はできなく、当日早めにバスステーションに着いたものの、
出発1時間前からじゃないとチケット発券しないという謎なシステムだった。
スースからジェルバ島のメインの街フームスークまで20.9ディナール(1200円)。
窓口の男性はジェルバ到着が21時という。
スース〜フームスークは300キロもないのに10時間以上かかるのは本当だろうか。
実際にはチュニジア大陸部からジェルバ島への渡し船の待ち時間を含めても8時間かからなく、
無事日が暮れる前にフームスークに到着した。
バスが直接乗り込む渡し船はあくまでシンプルなものだった。
フームスークもまたオンラインで予約しておいたシンドバッド•ホテルに泊まる。
コンパクトにまとまった部屋で27ディナール(1500円)。
チュニジアにおいてWiFiがレセプション近くでしか繋がらないのは当たり前になってきた。
部屋でネットサーフィンできる快適なモロッコに劣ってしまうし、宿代も安くない。
ジェルバ島は白亜のドームが特徴らしく、シンドバッド•ホテルの中庭にもドームがある。
チュニジアで毎日楽しみになってきた食事。
ジェルバ島の食事もおいしく、エビが入ったパエリヤに鶏肉を載せたものが7ディナール(400円)。
またスパイシーなクスクスと魚のセットのなかなか美味しい。
料金も7.5ディナール(450円)とお手頃だった。
最終日に食べた卵とソーセージのウジャも5ディナール(300円)と安く、
バリエーションがあるチュニジア料理に満足してしまう。
フームスーク初日の夜は満月が昇っており、
白いドームのような屋根の上で輝いていた。
明後日にはスースに戻るので、1日のみのフームスーク街歩き。
せっかくの地中海の島であり、ここで誕生日を迎えるのに曇りがちなのが残念。
昨年の誕生日の舞台となったモルディブとは雲泥の差だろう。
そもそもモルディブのクリスタルブルーの海水とは打って変わって、
フームスークの海はスースよりも汚く、
波がまったくない海辺に海藻のようなものが溜まっている。
小さな漁港近くの水面は微動たりともせず、
曇り空のせいで湖のように思える。
スースの地中海はどこへ行ってしまったのだろう。
港に面したカフェも誰もいなくて寂しい。
海辺にある要塞も観光地というより廃墟のように見えてしまう。
フームスークもチュニジアの街として例にもれず、
観光客や外国人をほとんど見かけることがない。
夏場の強い日差しを遮る白い天井で覆われたスークを探索してみる。
シルバーのアクセサリー屋が並んでおり、唯一の観光客の自分に声がかかる。
フームスークのスークは小さいもので30分もあれば見回ってしまう。
なかなか売れそうにない土産は夏のハイシーズンまで飾っておくのだろうか。
島特有ののんびりとした感じにアラブのエキゾチックな活気を感じない。
小さな町をぶらついていると白いドームを発見。
何に使われているか分からないけれども、他のチュニジアで見かけなかった様式だ。
白亜のドームのモスクもジェルバ島っぽいのかもしれない。
不思議なことに教会まであり、
ジェルバ島の独特な歴史を感じずにいられない。
ただスースから8時間かけて来たわりにそれほど魅力がないように思える。
はっきりいって地味で退屈な街で誕生日を過ごしたけれども、
こういった空白感も旅の贅沢だろうと実感した。
ジェルバ島からスース、チュニスと戻れば北アフリカの旅が終了。
ユーラシア大陸を舞台とした住み渡りも残りマルタとイタリアのみ。
1ヶ月で750ドルのシェアハウスを予約したニューヨーク、北アメリカ大陸へ飛び立つ日が近づく。
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