2014年4月2日水曜日

静かな漁村と砂丘(2014年4月1日)

2013年の9月末で仕事をやめてからちょうど半年が経った。
長いようで短く、かつてないほど充実していた6ヶ月間。
昨年の10月1日からは自由になった解放感に浸るまもなく、
東京でのアパートの引き払いや家具の処分、実家への荷物の郵送、公共手続き、
友人との晩餐、北海道ドライブ、札幌の実家での晩餐、
台風の影響で東京行きのフライトの遅延…、と慌ただしい日々が続き、
気がついたら夜行バスで東京から大阪に向かっており、
京都で友人に会ったり、初めて清水寺を訪れたりし、
日本最後の街となった福岡で携帯電話を解約して、
翌日には釜山行きのフェリーに乗っていた。




半年という一つの節目だからというわけではないが、
2014年4月1日は4時半に起きて、ムイネー郊外の白い砂丘から日の出を見る。

ムイネーはニャチャンからバスで5時間くらい南下したところにあるリゾート地。
リゾートとはいえ、ニャチャンのように高層ホテルが立ち並んでいたり、
けばけばしいバーでロシア人が夜通しパーティーをやっているタウンではなく、
漁村に毛が生えたようなところである。
ビーチというには海水が汚れ過ぎている海辺に沿って一本のメイン通りがあり、
海辺には低層のホテルやバンガローが並んでいる。
宿はバスを降りて歩いていたら、おじさんが声がかけてきたので、
案内されるがままに10ドルの部屋に泊まる。
ベトナムではやはりエアコン、ホットシャワー、
テレビ、Wi-Fiは当たり前なのかもしれない。



ビーチリゾートといえる派手さや美しさはないものの、
パームツリーにより南国感が漂う砂浜は寛げる。
透明度が低い海水のため泳いでいる人は多くなく、
ここでもまた多くのロシア人が日光浴している。
自分も透明度が比較的ある午前中に海水浴したりする。



ムイネーはあくまでも漁村なので、
一寸法師が乗るようなお椀型の船を眺めたり、
ビーチで遊ぶ子供達を眺める以外にすることはない。
漁村ののんびりとした空気の中、人々は穏やかだった。




また、ニャチャンにはなかったスローな雰囲気が砂浜で戯れる動物達からもあふれている。
ムイネーのビーチでは特に何もせず、砂浜での営みをぼんやりと見つめていた。
若干雲に覆われた夕日はちょっと感傷的な気分にさせてくれる。
仕事をやめてからの半年間いろんな街で夕日を見てきたな〜、
と思い浸るには十分すぎるほど穏やかな夕焼けだった。





再び旅の路上で生活するようになってからちょうど6ヶ月が経ち、
最初の朝はドアのノックで起こされる。
前日、モーターバイクで砂丘に連れて行ってくれるようお願いしたおじさんが4時過ぎに起こしてくれる。
目覚めた数分は現実感がなかったが、
すぐに朝日を見に行くことを思い出し、急いで外に出る。
さすがに朝が早い漁村でも4時半のメイン通りは静まり返っている。
汗臭いおじさんのモーターバイクの後に乗り、生温くねっとりとした風を浴びつつ、
見上げると、星空が静かに佇んでいる。
以前の旅ではよく星空を見たが、この半年間はあまり見ていない気がする。
最後に見たのはいつだろう?
韓国の仁川から中国の大連に渡るフェリーから満点の星空を眺めたはず。

モーターバイクのおじさんによると、
ムイネーには漁村のすぐ近くに赤い砂丘があり、
40キロ先に白い砂丘があるという。
今回連れて行ってくれるのは両方だが、まずは白い砂丘へ。

40キロはないと思うが、40分近くモーターバイクで南国の夜明け前の風を浴びていると、
暗闇の中に砂丘への入り口と思われるちょっとした売店が見えた。
入場料がいるようだが、5時過ぎでは窓口も閉まっている。
売店からは林へと続く道が延びている。
モーターバイクのおじさんは入り口で待っているというので、
自分一人で闇の中進んで行くのか、と不安になったが、
すぐに観光バスが到着し、数人のロシア人が降りてきた。
暗闇の中、砂丘の方向が分からないのでロシア人グループに着いて行く。
途中、吠えまくる犬が何匹もいて、1人じゃなくてよかったと実感する。
林が終わると、一気に砂丘のシルエットが浮かぶ。
空も明るくなりつつあるようだ。



静かに日の出鑑賞というのは甘い考えのようで、
後から中国人の観光客もやってきて、
砂丘のふもとでレンタルできるバギー車に乗って騒いでいる。
一方、ロシア人は寡黙ながら砂丘からのそり滑りを夜明け前から楽しんでいる。

自分はバギー車やそり滑りに興味がないし、
タイヤの跡や人の足跡だらけの砂丘も興ざめなので、
黙々と遠方に進んで行く。
中国人観光客は近場で遊んでいるようなので、
砂丘の奥に進んで行くと、バギー車のエンジン音も小さなくなり、
騒ぎ声も気にならない。
小高い砂丘から見た朝日は雲間からの出現となる。
柔らかい日の出と今いる砂丘に現実感が湧かず、シャッターを押すのがやっとだった。




砂漠は日が昇ってからの陰影礼賛がたまらない。
まだ生まれて間もないようなフレッシュな砂丘の表面は美しい風紋が刻まれている。
旅では足跡だけを残せ、と言われるけれども、
砂丘ではせっかくの砂紋を乱してしまう足跡を残すのもはばかれそうだ。
よくよく見るとすでに先客の足跡もあった。
また、自分と同様に現在足跡を刻んでいる生物もいる。






幸運にも砂丘をずっと奥まで進むと他の観光客はいなく、
別の惑星を歩いているように感じられる。
一つ二つ手前の砂丘のおかげか、バギー車の音もすでに聞こえない。
サハラ砂漠のように奥まで進んで道のない道に迷うこともない規模の砂丘なので、
存分にミニサハラを歩き回った。





夜明け早々砂丘で歩き回り、
入り口まで戻った時は7時半。
2時間以上も砂丘にいたので、モーターバイクのおじさんも苦笑いしていた。

次に行った赤い砂丘はまさにモロッコで見たサハラのように赤い砂だった。
しかし、白い砂丘より規模は小さいし、
すでに人の足跡だらけで砂紋もほとんど残っていない。
赤い砂丘は漁村に近すぎるため、地元のベトナム人のそり滑りの遊び場になっているようで、
あちらこちらにゴミが散乱していてがっかり。
最初に白い砂丘に連れて行ってくれたおじさんに感謝である。




人間、半年も働いてなければそろそろ仕事したくなるかもしれない。
でも、今の自分はまだまだ旅世界にどっぷりと浸かっていたい。












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