街歩きもろくにせずに4泊したクパンを発つ。
クパン到着翌日に購入したPelniのフェリーでフローレス島のエンデに向かう。
バリ島のデンパサールから東ティモールのディリまでsriwijaya airでわずか2時間で移動した距離を
4週間かけて船とローカルバスで遡っていくインドネシア東側の島巡りである。
クパンの滞在は退屈だった。
東ティモールのディリよりは人口が多く、賑やかなクパン。
海も確かに美しい。
それでも、気分的にローだったからか、特に見どころがないクパンの街歩きは楽しめず、
日差しが強い日中はプリペイドSIMの3G回線も満足に繋がらないので、
バックパックの奥底に眠ったまま1年間取り出すこともなかった文庫本を読んだりした。
友人から出発前にもらい一度も開いていなかった本を読み出すと面白く、
2回も熟読してしまう。
また、自分が宿泊しているLavalon Bed & Breakfast近くにある
海沿いのLavalon Bar & Hostelにて遅いWiFiを利用して、
来年のオーストラリアからニュージーランドの往復航空券、
オーストラリアからシンガポールへの格安航空券を早めにネット予約しておいた。
ある程度旅程が決まっていれば、早めの予約の方がプロモーションやセールがあっていい。
10月25日のPelniフェリー出港は15時。
チケット購入の際、正午にフェリーターミナルに来るようにと言われているので早めに宿を発つ。
自分とインドネシア人2人しか宿泊していなかったLavalon Bed & Breakfast。
4泊も滞在すると、ちょっとした宿でも去るときに感慨が湧いてくる。
クパンのフェリーターミナルまでは40000ルピア(360円)とぼったくってくるオジェ(モーターバイクタクシー)を断り、
ローカルなミニバン、ベモで向かう。
街中のベモ停留所で一度ベモを乗り換えてBolokにあるというフェリーターミナルへ。
ミニバンを運転するのは青年で、乗客からお金を集めるのは中学生くらいの少年。
少年は開け放たれたミニバンに小さな椅子を置いて座り、タバコを吹かしていた。
Bolokのフェリーターミナルに到着後に少年に50000ルピア(450円)と言われるも、
苦笑いをしつつ10000ルピア(90円)を手渡す。
まったく文句を言われないのは10000ルピアでも多すぎるからかもしれない。
いざフェリーターミナルにチケットを見せて入ろうとすると、
ゲートの係員にエンデ行きのPelniのフェリーターミナルはここではないと言われる。
訳が分からないまま呼ばれたオジェの後席にまたがり、
来た道を少し引き返したところに別のフェリーターミナルがあった。
フェリーは行き先や会社により利用するターミナルが異なるそうで、
エンデ行きのPelniフェリーはBolokではなくTenauの港からだった。
早めに宿を出たおかげで正午前にTenauのフェリーターミナルのゲートに到着。
オジェに払った20000ルピア(180円)は無駄な出費だった。
正午前から港のゲート前で待つ人々がいる。
正午を過ぎてしばらくしてからゲートが開き、
チケットチェック後せかされることなく待合室に入っていく。
かつてのインドや中国、エジプトのように押し合い、わめき合いがないのは
のんびりとした温厚なインドネシア人の国民性かもしれない。
待合室から見える船着き場は数人の売り子たちがいる平和的な光景。
空港の搭乗口や鉄道のプラットフォームのような慌ただしさは港にはない。
フェリーターミナルといえば汚染された海水をイメージしてしまうが、
クパンのTenau港の海は海水浴を楽しめそうな透明度である。
13時過ぎくらいにようやくフェリーが現れる。
想像していた小さめの船とは違い本格的なフェリー。
1年前に福岡から釜山に渡った時のビートル号や
韓国の仁川から中国の大連に渡った時のフェリーを思い出してしまう。
もちろん、清潔さや快適さやまったく別物だとすぐに分かるのだが。
地元のインドネシア人と共にゆったりとした足取りでフェリーへ。
タラップに向かって走っていくような人はいなかった。
都会からかけ離れた島人の気質が時間もゆったりとさせているのだろうか。
フェリーに乗り込み、他の人を見習って雑魚寝するマットレスをバックパックで確保する。
エコノミークラスはクパンからエンデまで99000ルピア(900円)と安い反面、
雑魚寝スペースはファンもない暑苦しいものだった。
起きてる時はデッキに出て潮風を浴びていればいいものの、
眠る時は熱気がこもり、逃げ場のないタバコの煙で喉が痛くなり、
しかもマットレス近くの壁には大小多くのゴキブリが這いずり回ってひどかった。
多くの人々が汗をかきながら横になるエコノミークラスの大部屋はいい香りもしない。
フェリー出港には暗黙の了解があるようで、定刻通りに動き出すのはまれ。
出航時刻の15時を過ぎても、のんびりと港の待合室から荷物を持って向かってくる人々がたくさんいた。
あまりにものんびりしているため、デッキのベンチで居眠りしていると汽笛で起こされ、
16時過ぎにようやくタラップを離して、フェリーは出港した。
ちょうど夕暮れ時。
どういうわけかフローレス島とは反対側の南方向にフェリーは進み、
進行方向の右側、西側の空に眩しい夕日が沈んでいくのが見える。
これから24時間かかるらしい船旅の始まりとしては幸先がいい。
また、退屈だったが合計2週間過ごしたティモール島での日々を思い起こし、
若干感傷的になったりもする。
インドネシアのフェリーだけあって船内にモスクがあり、
日が沈む直前に船内にアザーンが響き渡る。
キリスト教徒が多いティモール島ではあまり耳にしなかったアザーン。
船旅の旅情はやはりいい。
夕日が沈み、暗くなると食事タイム。
韓国や中国のように簡易食堂での給食のようなプレート食が支給されると思っていたら、
プラスチックケースに入ったご飯と炒めたインスタント麺とフライドチキンのみ。
しかも、20000ルピア(180円)もするのだからやはり船内のぼったくりはひどい。
食後はすることもなくひたすら雑魚寝スペースで蒸し暑さと空気の悪さに耐えつつ眠るのみ。
思えば、Pelniのフェリーには日本人や中華系の人はもちろん、
西洋人旅行者や外国人の姿を一切見かけることはなかった。
フェリーは途中、ティモール島南東の小さな島に2回停泊し、
やがて方向を北に換えてフローレス島に向かっていった。
暑さと空気の悪さに体もますます衰弱した感があり、
9時過ぎまで雑魚寝スペースで仰向けになる。
夜中一度だけデッキに出ると、暗黒の海からの風は心地よく、
長らく見上げることがなかった星空は美しかった。
南半球の星座はよく分からないが、オリオン座をくっきりと見つけ出すことができた。
ぼったくり料金でうまくないフライドチキンライスは1食で十分で、
翌日はカップ麺を食べながらひたすら大洋を眺める。
波は穏やかで海はひたすら海であり、
ときおり海面を飛び跳ねるトビウオ以外に静寂を乱すものはない。
デッキのベンチで何度も居眠りをし、気がつくと遠方に山々が見えている。
フローレス島が近づく。
すでに午後3時近く。
何もすることがない船での時間は意外と早い。
ほぼ24時間の航海の末、エンデに到着。
ちなみにこのPelniフェリーはエンデが最終地点ではなく、
雑魚寝の隣のマットレスの家族はジャワ島のスラバヤまで向かうらしい。
今回の島巡りの最終地であるバリ島よりも西側にあるスラバヤ。
暑苦しく、満足した食事もとれないフェリーであと何泊過ごせばスラバヤに到着できるのであろう。
ほんとご苦労様である。
とはいえ、自分もこれからはローカルバスでフローレス島を横断し、
スンバワ島への船に乗り、スンバワ島をバスで横断し、
再び船でロンボク島、バリ島と3週間以上かけて移動するのだから他人事ではない。
船から見えるエンデは文明を感じさせる港町というより
コロンブスが長い航海の上でたどり着いた島の小さな村のようで若干テンションが下がる。
マンディの溜め水を小さなバケツですくって体にかけるのではなく、
たまには豪快にホットシャワーを全身に浴びたくなる。
特に船旅の後にはそう感じてしまう。
船を降り、港を出てから声をかけてきたオジェのおじさんと交渉し、
10000ルピア(90円)でロンプラに載っているIkhlas(イクラス)ホテルへ。
50000ルピア(450円)の扇風機だけの部屋でも24時間の船旅の後では快適に映った。
翌日、エンデの街を歩いてみると、
確かにディリやクパンのように何もない街とはいえ、
何もないを通り越して田舎の雰囲気が溢れており、
2泊といわず、3泊するには快適そうに感じる。
東ティモールの首都ディリの交通の多さや
クパンのスピーカーから爆音を流してベモが走る光景はない。
フローレス島の漁村のようなゆったりとした空気が流れており、
疲れもとれそうである。
街の子供たちはシャイだけど陽気で、
外国人の自分を見て手を振ってくれる。
カメラを向けると、撮られ馴れていないからか、
一斉に自分の後側に回り込んできてカメラのビューファーンダーを覗こうとする。
いや、まずは正面から写真を撮らせてほしいんだけど…。
なんとかジェスチャーで伝え、
不可思議な表情をする子供を撮影し、
カメラのスクリーンを見せるとようやく喜んでくれる。
イクラスホテルのロビーのWiFiはまったく機能せず、
Telkomselの3G回線はクパンよりも遅いけれども、
来月から先進国のオーストラリアに向かう前に
純粋に旅を楽しむ舞台としてフローレス島は良さそうな気がする。
旅のデジタル三神器と勝手に名づけたデジタル一眼レフカメラ、
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