南島にはクイーンズタウンをはじめ、最高峰のクック山、湖、氷河、フィヨルドなどがあり、
とても3週間ですべて見て回れない。
すでにクライストチャーチからシドニーへのフライトを1月27日で予約しているので、
ニュージーランド滞在の延長は不可。
そもそも物価がオーストラリアよりも高い国をこれ以上個人旅行するのは厳しい。
南島の残りは将来の楽しみとして潔く残り数日のニュージーランドを楽しもうと思う。
カイコウラは真夏のハイシーズンに混み合う観光地らしい。
海と山があり、高い料金を払ってツアーに参加すればクジラに出会えるという。
ただでさえ物価高のニュージーランドでヘリコプターツアーや
ホエールウォッチングのクルーズは無理なので、
見晴し台から運良く目の当たりにできればと願う。
ピクトンからインターシティバスに乗って、2時間でカイコウラに到着。
南太平洋に沿った海岸線を走るバスの車窓からはすでにオットセイが見えテンションが上がった。
が、カイコウラに到着してまもなく曇り始める。
スーパーで買った韓国インスタントラーメンを遅いランチにして
外に出るとなんと小雨が降っていた。
雨は夜まで降り続け、いきなり幸先の悪いカイコウラ初日となった。
翌日には雨が上がり、朝から晴れ渡っている。
昨夜灰色だった海も乳白色の青色で明るい。
ただまだ雲は残っており、山々の頂は見えない。
さっそく朝から
…正確には寝坊したので11時近くから南東に突き出した岬へ歩いていく。
岬の東端にオットセイのコロニーがある。
距離にして4〜5キロだろうか。
ミルキーブルーの海を見ながら歩くのは開放感があり、
距離を感じさせない。
クジラの骨のモニュメントがあったり、海を見ながらのんびり寛ぐ老夫婦がいる。
何年経っても仲良しで一緒に休暇を過ごせる夫婦はうらやましい。
1時間半ほど歩いて東端のオットセイのコロニーに到着。
多くの観光客は自家用車やレンタカーで訪れるらしく駐車場には子連れの家族が多い。
真夏のニュージーランドでは忘れがちだけれど、
西欧ではクリスマスから続くスクールホリデーが1月下旬まであり、
ニュージーランドの子供たちにとっては夏休み中。
どうりでニュージーランド旅行中に遊んでいる子供をたくさん見かけるわけだ。
駐車場近くの入口には看板がある。
英語ではオットセイをfur sealというらしい。
正直に言うと、このときまでオットセイとアシカ、アザラシの違いが分からなかったので、
慌ててその場でネット検索した。
カイコウラに生息しているのはアザラシやアシカではなく、
オットセイということで間違いないようだ。
ちなみにオットセイは耳があり、鼻が若干尖っているらしい。
小高い丘から離れて干上がった岩場を歩く。
岩場周辺にオットセイの姿はなく、海に近い遠方に進んでいくと浅瀬になる。
満潮時だと深そうだが、干潮なのでジーンズのすそをたくし上げて水に浸かって歩く。
サンダルで来て正解だった。
やがて浅瀬で寝そべっているオットセイが見えてくる。
威嚇しないようにゆっくりと近づく。
看板にも10メートル以上近づくなと記載されているとおり、
写真を撮れるまで近づくと逃げてしまった。
別の岩場に歩いていくと、いきなり寝そべっているオットセイが現れて逆に驚く。
起こさないように静かに眺める。
一見死んでいるように見えるけれども、
胴体がゆっくりと膨らんだりしているので一安心である。
愛嬌のあるオットセイは見ているだけで癒される。
浅瀬が深くなる前に駐車場付近に戻ってから丘のトレイルを歩く。
岬は南アフリカのケープタウンの背景であるテーブルマウンテンのように丘陵が海岸線を境にテーブル状に盛り上がっている。
一度、上まで登ると平坦なトレイルコースとなる。
子連れの家族が楽しそうにハイキングしている。
クジラを探しつつ、大海原を眺めることも忘れない。
せめてイルカでもと願うものの、目にするのは海水から突き出た岩山だけだった。
岩は海面から現れたり沈んだりするので紛らわしい。
おっ、と一瞬目を見開くもすぐに失望に変わってしまう。
ふと背景の山々に目を向けると、
午前中は完全に雲に覆われていた雪山の頂上がちらほらと見える。
雲が東側に流れていくにつれ、じょじょに景観が明らかになっていく。
クジラ探しは半ば断念して山を眺めながらテーブル上のトレイルコースを歩いた。
牛が戯れる牧歌的な草原に雄大な山々。
カイコウラはこれだけで十分と感じてしまう。
一度町外れにあるホステルに戻り、
夕方再びテーブル状の丘陵を歩き回る。
日が沈むのは21時直前で、20時頃から西日に照らされた草原がゆったりとした時間を演出してくれる。
また、高台から一望できるカイコウラも見とれてしまう。
弧を描いたミルキーブルーの海辺に雪を被った頂を持つ山々。
大きく傾いた西日を浴びる高台の花々は幻想的でもあり、
のんびりと帰路へ歩いていく牛の姿が哀愁的でどことなく北海道の田舎の風景を思わせた。
カイコウラからクライストチャーチに移動すれば充実していた20日間のニュージーランド旅行が終わり、
クライストチャーチからシドニー、
シドニーからシンガポールへと飛んでいくことでオセアニアの旅にピリオドが打たれる。
13年ぶりに訪れたオーストラリア。
ニュージーランドへの再訪は何年後になるのだろうか。
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