タジキスタンの醍醐味は移動。
一泊したムルガブを早々に発ち、絶景続きのパミールハイウェイを進み、
ワハーン回廊に入ってからアフガニスタンとの国境をなすパミール川に沿って4WDが走っていく。
ムルガブで宿泊したパミールホテルにてムルガブ〜イシュカシム〜ホーログの交通手段を手配してもらった。
前日キルギスタンのオシュから一緒だったイタリア人青年アレクサンドロは一週間かけてパミール高原を廻るのでここでお別れ。
自分と誠さん、同じくパミールホテルに宿泊していたポーランド人旅行者3人と4WDをチャーターする。
車一台で2000ソモニ(4万円)というドライバーの言い値をロシア語を話せるポーランド人男性が交渉してくれ、
最終的には1500ソモニ、1人300ソモニ(6000円)でムルガブからイシュカシム、
イシュカシムで一泊してからホーログまで行く。
パミールホテルでパンと目玉焼きだけの朝食を食べ、
銀行で100ドルをタジキスタンソモニに両替しておく。
明るいパミールホテルの前には中国新疆ウイグル自治区からのトラックが連なって停車していた。
ポーランド人、ドライバーとの打ち合わせで決めておいた出発時刻は午前11時なので
部屋でのんびりしていると1時間前にバックパックを4WDの車体に乗せるように言われる。
iPhoneで自動設定されている時刻は10時なのにすでに11時とのこと。
ムルガブはドシャンベを中心とした他のタジキスタン標準時刻と異なるパミール時刻であり、
時差+1時間である。
タジキスタンに入国してから時計を1時間遅らせたのにまた1時間早めてややこしい。
ドライバーがバックパックを三菱のパジェロの上にひもでくくりつけてから出発。
走り出してまもなく近くのガソリン屋で給油する。
ホースで給油するガソリンスタンドではなく、ポリタンクとバケツを使って汲み入れている。
すぐに前日の続きのようなパミール高原の風景が続く。
乾いた険しい山々は単調なものの飽きることない。
モンゴルの大草原、ゴビ砂漠の7泊8日のツアーで人工物から離れた大自然の魅力にはまってしまったからか、
大都会好きの自分でもパミール高原に魅せられている。
オシュからムルガブに来たとき同様、自転車に乗った西欧人を多く見かける。
パミール•ハイウェイはチャリダーに人気なのかもしれない。
乾いた山々が続いた後、淡い緑の湿地帯がひらける。
潤った高原の草木と頂に雪が残る岩山のコントラストが目を覚まさせてくれる。
パミール高原は現実離れした標高4000mの世界。
ちょっとした山で5000m、雪に覆われていれば6000mもある。
午前11時過ぎにムルガブを出た4WDは順調に進み、
タジキスタン時刻13時近く、パミール時刻14時前にアリチュールという小さな町に到着する。
平屋が点在する辺境の町である。
次の村、ランガルまで相当距離があるのでここでランチタイム。
小さな食堂で注文したラグマンはキルギスタンと打って変わって、
トマトスープの汁にぶよぶよにのびたスパゲティが入っている代物だった。
標高4000mの世界では沸点が低いのでアルデンテは不可能なのだろう。
モンゴル以来見馴れている地面に掘った穴に板を敷いただけのトイレを覗いて出発。
アリチュールを去ってまもなく進行方向右手に湖が現れる。
チャーターしている4WDなので写真撮影のために停めてもらうのも自由。
5人で降りてパミール高原の青い湖を眺めた。
やがてパミールハイウェイとワハーン回廊に向かう道路の分岐点にさしかかり、
日が暮れる前にイシュカシムに到着すべくパミールハイウェイから離れる。
ちなみに南旅館で出会った旅行者やパミールホテルの情報によると、
この先のホーログまでのパミールハイウェイの道程において土砂崩れがあり、
道路が封鎖されているらしい。
土砂崩れ前で車を下車して1時間以上歩いて土砂崩れを越えなければならないとか…。
ゴロゴロとした岩が転がり、小さな湖も左手、右手と順に現れる。
標高4000mのパミール高原では雲が近く感じられる。
土埃が舞う舗装されていない道を1時間弱進み、検問にぶつかる。
ここでパスポートチェック。
地図を見るとここからワハーン回廊のようで、すぐ目の前がアフガニスタン。
タジキスタンとアフガニスタンの国境線であるパミール川に沿って道が続いている。
パミール川の向こう側のアフガニスタンの景色が雄大である。
山々のさらに先はもうパキスタンらしい。
つまりちょうど10年前の2005年に旅したパキスタンのフンザが向こう側に広がっていることになる。
フンザから眺めた7000m急のカラコルム山脈が懐かしい。
あまりにも簡単なパスポートチェック後、
日本人2人、ポーランド人3人、タジク人ドライバーの6人を乗せた三菱のパジェロは国境の役割をなすパミール川沿いを進んでいく。
もちろん舗装されていない道路は川辺ぎりぎりを走っており、
すぐ目の前のアフガニスタンの乾燥した山々をぼんやりと眺める。
ちょこっと車を停めて、流れが激しい川を渡りはしないものの、川の水を触ってみたくなる。
が、地雷が埋まっているかもしれないのでやめておけと言われた。
人気のないアフガニスタンの対岸にときどきキャンプしている人がいたり、
馬を連れた人をみかけたりする。
4WDはチャリダーの1人を追い抜かす。
振り返ってみるとどこかで見た気がする。
なんとビシュケクのサクラゲストハウスで2週間近く日々を共有した日本人旅行者の一人みのるさんだった。
急いでドライバーに車を停めてもらう。
久しぶりの再会、しかもアフガニスタンの国境に沿ったワハーン回廊での思いもしない出会いに興奮する。
みのるさんは8月上旬にサクラゲストハウスの旅仲間に見送られてオシュに向かったので、
かれこれ2週間以上自転車を走らせていたことになる。
標高が高いパミール高原、人気がなく土埃が堆積したワハーン回廊を自転車で何日もかけて移動するとは脱帽である。
みのるさんの近況を聞き、記念撮影して別れた。
ビザ待ちのために長居したビシュケクで出会った旅行者にこうして旅の道程で再会できると感慨が湧く。
乳白色の濁流に沿ったワハーン回廊も飽きることがない。
遥か向こうに雪に覆われた6000m急の山々が見えてくる。
アフガニスタンとパキスタンを隔てるヒンドゥーカシュ山脈らしい。
先の尖った山峰に再びテンションも高まってくる。
思えばタジキスタンに入った昨日、今日の2日間だけで6週間過ごしたキルギスタンよりも写真を撮っている。
婉曲した山道を土埃をあげながら進み、カーブが来るたびにアフガニスタン、パキスタンへと続く壮大な景色を撮りまくる。
遠かった白い山峰が近づいてきた頃に村が現れる。
渓谷に広がる村は初めてなのに既視感がある。
10年前に滞在したパキスタンのフンザバレーに似ていなくもない。
すでに18時過ぎ。
日の入りまで2時間なのでドライバーやポーランド人と話し合い、
イシュカシム行きは明日に延長して今夜はフンザバレーを想起させる山間の村、ランガルに一泊する。
西洋人旅行者が集まる名も知れないホームステイに荷を下ろす。
簡素な夕食、朝食付きで100ソム(2000円)なのでタジキスタンは割高感が強い。
夕暮れ時はランガルの村をぶらつく。
写真をねだる子供達がフレンドリーで時間に余裕があり、宿代が安ければ延泊したくなるランガル。
夕焼けに染まった山々に2日間しか滞在していないタジキスタンの虜になりそうになる。
300ソモニでの1泊2日パミール高原の4WDチャーター移動は思っていた以上の価値がある。
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