2015年7月20日月曜日

新疆ウイグル自治区、タクラマカン砂漠縦断(2015年6月30日)

シルクロードの旅が続く。
新疆ウイグル自治区の中心都市ウルムチからホータンへ。
ホータンの町よりもタクラマカン砂漠縦断ハイウェイを走るバスが目的。
二週間前にモンゴルでゴビ砂漠を満喫した後でもシルクロードのタクラマカン砂漠に憧れている。

ウルムチの中心から離れたwhite birchesユースホステルに2泊滞在。
西安から列車2連泊の疲労をとるには固すぎるドミトリーのベッドだったが、
新疆ウイグル自治区を旅行中の中国人の若者や南アフリカ人と交流できて充実していた。


これまでの中国と違ってエキゾチックなウイグル族地区も歩き回る。
もともとウイグル族が住む町なのに漢民族に居住区を狭められているのは皮肉なものだが…。
新疆ウイグル自治区の中心都市とはいえ漢民族が7割を占めるウルムチは一見普通の中国の都会のようだけれども、
二道橋市場周辺、解放南路にかけては完全にウイグル族の世界。
もはや中国というよりかつて訪れたイランやパキスタンの雑多な雰囲気に近い。
道ゆく人のほとんどが彫りの深い顔つきのウイグル族で、
男性はイスラム帽子を被っていたり、女性は頭にスカーフを巻いている。
ウイグル族以外にもタジク人、カザフ人、ウズベク人も混じっているらしい。
いつのまにか中国から中央アジアの街に彷徨い込んでしまったようだ。




二道橋市場では観光客向けの土産や絨毯、ナツメヤシを売っており、
屋内市場はまさに以前イランやシリアで歩き回ったバザール。




尚、市場の外にはいかにも中央アジアにありそうなミナレットが立っている。
ウズベキスタンのブハラにあるミナレットのレプリカらしい。


ウイグル族一色の解放南路周辺の光景に圧倒される。
たまに見かける漢民族が外国人のように映るから不思議である。
文字表記は漢字、アラビア文字を使ったウイグル語の2カ国語。



調べたところによると、漢民族とウイグル族は顔つきも言葉も異なれば、
住む地区、生活スタイル、食事や物流も異なるらしい。
また新疆時刻という中国標準の北京時刻と2時間の時差で生活していたりと、
中国内にありながら完全に別の国のように感じてしまう。
いや、正確にはもともとウイグル族が住む新疆を中国が領土とし、
「民族統一」などと皮肉っぽいスローガンを掲げ、ウイグル族の世界に漢民族を次々と送り込み、
漢民族しか住めないような典型的な高層マンションを建設しているのが現状だろう。
もちろん高層マンション建設のためにかつてのウイグル族の家屋や商業地区は無造作に取り壊されている。
年々新疆ウイグル自治区に寄生していく漢民族はウイグル族の人口を追い越そうとし、
ウイグル族への弾圧も強まっているそうだ。
でなければ、怒りが溜まったウイグル族によるテロや襲撃事件が起こるわけがない。

実際にウルムチにたどり着き、ウイグル族が集まる食堂に入って気がついたのだが、
現在はラマダン、断食月だそうだ。
ここまでイスラム世界が徹底されているのにウルムチのモスクからのアザーンが聞こえてこない。
中東諸国、マレーシアやインドネシアでも当たり前にようの1日何度が街中に響き渡るモスクのスピーカーからのエキゾチックなアザーンが流れていないのは奇妙だ。
これも中国政府による宗教規制かと懐疑的になってしまう。




ウルムチから夜行バスでホータンに移動する。
ウイグル族地区にある南部バスステーションはwhite birchesユースホステルから離れているものの、
ユースホステルを出てすぐ見えるBRT乗り場からBRT3で南部バスステーション前の三屯碑までダイレクトに行ける。
ちなみに1元で乗れるBRTは自動車とは別のレーンを利用する市バスなので使い勝手がいい。
が、出発当日バックパックを背負ってBRT乗り場のセキュリティチェックを通過する際、
警備員にいちゃもんをつけられて危うくBRTの乗れないところだった。
別の警備員になんとか通されたとはいえ、襲撃事件や爆弾テロが多いウルムチだけあって
セキュリティチェックがこれまでの国にないほど厳重。

2日前に購入した15時発のホータン行きのバスチケットは370元(7400円)と異様に高い。
ウルムチからホータンまで20時間以上かかるのはもちろん、
タクラマカン砂漠を貫通するので特別料金らしい。
早めにバス乗り場に行くと、寝台バスが待っている。


完全に仰向けになれるベトナムや中国でお馴染みのスタイルのバス。
ただ寝返りをうつには狭すぎて寝台というより棺桶というべきかもしれない。


15時過ぎにウイグル族がほとんど、漢民族数人、外国人自分一人のバスが出発。
南部バスステーションを出るとすぐにウルムチ郊外となり、
やがて西安からの列車からも飽きるほど見た風力発電タービンが荒野に並ぶ。
規則正しく並ぶタービンの数は凄まじく、生み出す電力も強大なのだろう。


棺桶バスではひたすら睡眠。
ウルムチを出てすぐにタクラマカン砂漠に突入するわけではなく、
険しい岩山が道路を挟んでいる。
土煙を上げながら流れる濁流があり、
西安に続きウルムチでも雨が降っていたせいかもしれない。
雨模様とはいえまだ明るい19時頃に夕食タイム。



中華食堂と違い、紙のメニューがないウイグル食堂において
よく分からないまま注文して中国各地のイスラム食堂やウルムチで馴れ親しんだラグメンが出てくる。
中華麺がシルクロードを通ってイタリアに渡りパスタになったとう説があるが、
ラーメンからスパゲティのナポリタンへの進化途中のようなラグメン。
麺は手打ちのラーメンだが味付けはナポリタンで美味しい。


食後は棺桶バスで再び眠りに陥る。
2日前の34時間の硬座と違い、寝台では足を伸ばして熟睡できるのがありがたい。
寝たばかりだからか奇妙な夢のような現実のような夢ばかりを見る夜だった。

朝目覚めるとすでに砂漠の中。
砂丘がなかなか現れないゴビ砂漠のような荒野だろうという予想に反し、完全なる砂の砂漠。
バスはタクラマカン砂漠のど真ん中を貫通するハイウェイを走っている。



乾燥植物が生えるハイウェイ沿いを離れると、どこまでも丘陵のある砂の砂漠が広がっている。
ひたすら棺桶バスから砂漠を見るだけで満足出来るバス旅となった。

25時間後の翌日15時にホータンに到着。
シルクロードのタクラマカン砂漠の街というイメージと裏腹に中国らしい町。
とはいえ、圧倒的にウイグル族が多い。
中国では日本人に見えない自分でもアウェーに感じる。

ホータンでは外国人が集まるホステルや安宿はなさそうで、
バスステーションを降りてすぐ見える交通ホテルに泊まる。
160元と高いものの1泊140元(2800円)にまけてもらい2泊する。
バンコクから北京に飛んで以来初めてのプライベートルーム。
Wi-Fiの電波が弱すぎてネットがほとんど使えないのが難だけれども、
まともなホテルに最後に泊まったのはいつだろうか。
ミャンマーやタイ、マレーシアと遡ってもない気がする。
むろん料金もアジアでは一番高いが。
部屋からバスステーションが見え、朝早いバスでも心配なさそう。



ホータンはウイグル族が人口の8割をしめているそうで、
中東やパキスタンに近い雰囲気が異国情緒をかき立てる。
バザールを物色しているとイランやトルコを歩いている気分になる。
テヘランやイスタンブールで見かけた絨毯屋がホータンにもある。



民族衣装を着た子供達は可愛らしく、なかなか写真を撮らせてくれない漢民族と違う。



ラマダン中のホータンに昼食をとれそうなウイグル食堂はなく、
ちょっとした中華街のように漢民族の店や中か食堂が並ぶ一角でホイコーロを食べた。
漢民族が2割に満たないホータンだからか、数日ぶりに食べる普通の中華飯は29元(580円)と高かった。


ただタクラマカン砂漠を超えた辺鄙なホータンでも漢民族の流入が進んでいるようで、
ウイグル族の古い居住区を取り壊して無味乾燥な高層マンションの建設が進んでいた。
これから何年も経てば漢民族とウイグル族の割合が変わってしまうのだろうか。



今回の世界周遊において最後の中国の町としてカシュガルを訪れる。
カシュガルにて中国、東アジアの旅が完全に終了し、中央アジアへと突入する。
見た目も限りなく中東に近いカシュガルはパキスタン、キルギスタン、
タジキスタンに近い中国で最西端の町。
10年前のユーラシア大陸横断時に訪れたイランやパキスタンを彷彿させる世界だった。

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