2016年12月3日土曜日

イルクーツクから86時間のシベリア鉄道後半を終えてモスクワ到着(2016年11月21日)

81時間と思っていたらイルクーツクとモスクワの時差が5時間のため86時間もかかったシベリア鉄道後半。
ひたすら続く雪化粧のタイガと白樺の車窓はいいにしても、
4日間シャワーなし、カップ麺続きにうんざりしてきた頃、
人口1200万、ヨーロッパ最大都市のモスクワにたどり着いた。
ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京に並び世界主要都市のモスクワは空白のシベリアと別世界だった。



シベリア鉄道前半の経験を生かし、カップ麺や菓子の他にティーパックを持ち込み、
退屈な車内では紅茶を飲みながらiPhoneにダウンロードした音楽をひたすら聞く。


閉ざされた空間で線路を走る列車の振動がリズミカルに続き、
白樺と雪をかぶった針葉樹林が延々と車窓を流れる。


四日間走っても外の景色がほとんど変わらない国はロシア以外ないだろう。
大国のアメリカや中国は荒野や草原、農園、丘陵、山地、砂漠と地形のバリエーションに富んでいたし、次から次へと人々が生活する町が現れた。
世界一の面積を誇るロシアには空白が無限大に広がっている。




3等開放の寝台電車をイルクーツクからモスクワまで乗り続ける人は稀で、
同車両の乗客は次から次へと変わっていく。
子連れのモンゴル系家族から若いカップル、老婆、若い兵士のグループ、
少なくとも自分の車両で外国人を見かけることはなかった。



2時間おきくらいにそこそこのサイズの駅に停車し、
たまに外に出てシャバの空気を吸ってみる。
後で知人に見せたら動く刑務所のようだと言われたシベリア鉄道3等開放寝台。
気分転換に降りてみたシベリアの大地は車内の暑さが一気に吹き飛ぶ冷気に包まれていた。



車内に4泊、おそらく1日平均10時間以上眠り続けたシベリア鉄道での時間もやがて終わる。
ダウンロードした映画もすべて見終わってしまい、
ウラジオストクからイルクーツクまでのシベリア鉄道前半とあわせた7泊8日で住み渡り3年間を超えた1120日間を振り返ったりもした。
西へ西へと進むにつれて日の出時刻と日の入り時刻が遅くなる不思議な時空間で
腕時計をイルクーツク時刻から5時間前のモスクワ時刻に変更する。
イルクーツク時刻で午前8時なのにモスクワ時刻だと深夜の3時に車掌に起こされ、
降車準備をする。
午前4時20分、暗闇の中に赤い電飾文字が浮かぶモスクワ駅に到着した。
完全に釈放されてシャバの世界に出ると、予想していた極寒は感じられず。
モスクワの最低気温はマイナス2度くらいだった。


モスクワではあらかじめネット予約していたホステルに5泊宿泊。
赤の広場からそう遠くないMakarov Hostel Tretyakovkaは一泊450ルーブル(750円)とヨーロッパの大都市でありえない安さ。
これもルーブル下落のおかげだろう。
シベリア鉄道に乗っていた間、急激に円安が進み1ルーブル=1.6円から1ルーブル=1.7円になってしまったけどまだまだ安い。
あらかじめ地図上でチェックしておいたMakarov Hostel Tretyakovka。
住所は把握しているのに、看板は一切なく、無機質なアパートの一室になるので見つけるのに相当苦労した。
周囲の店の人に聞いても知らないと言うし、通りすがりの人に住所を見せても介さない様子。
最終的に親切なウズベク風の警備員の男性にアパートのブザーを鳴らしてもらい中に入れた。
一筋縄でいかないロシアのホステルである。


世界主要都市モスクワだけあって訪れる前から街のイメージが頭の中にある。
モスクワのイコンとも言えるワシリー寺院。


テレビやネット画像、雑誌や旅行会社のパンフレットで必ず目にする、おとぎの国に出てきそうな建造物はお城かと思っており、てっきりこれがクレムリン宮殿かと勘違いしていた。
実際はロシア正教の大聖堂であり、ワシリー寺院というらしい。
間違いなくロシアで最も奇抜で、1度目にすると脳裏から消えない世界遺産の大聖堂。


ワシリー寺院の先に広がる有名すぎる赤の広場。
クレムリン宮殿と赤の広場の組み合わせは毎年新年カウントダウンに上がる花火の映像で見慣れたもの。
あまりにも有名すぎる観光地を現実のものとして目の当たりにすると少なからず達成感が湧く。



外観がライトアップされているグムデパートがクリスマスの到来を感じさせる。


巨大なデパートの外観もさることながら内装も豪華。
モダンなショッピングモールが次々と増える現代に老舗のデパートは味がある。



赤の広場を囲むのはワシリー寺院であり、クレムリン宮殿であり、
グムデパート、レーニン廟、そして軍事博物館。
どれもモスクワならではの豪華さ。



これまたモスクワで有名な歩行者天国アルバート通りを歩いてみる。
観光客の土産屋や多く、ニューヨークのタイムズスクエアみたいに着ぐるみに身を包んだ男衆が写真をせがんでくるが、確かにロシアっぽい通りでもある。



土産屋にはロシア定番の無数のマトリョーシカが並び、ソビエト時代のカメラなどのグッズが売られている。
たいして興味がなかったマトリョーシカだけど、何度も見ていると買いたくなってくる。



ちなみにロシアのお土産の一つとしてスターバックスのロシア限定のタンブラーが有名らしい。
どんなものか実際にスタバに足を運んで見に行ったら、
あまりにもレアで本物のマトリョーシカより実用性がありそうなので衝動買いしてしまった。
中サイズのタンブラーが800ルーブル(1350円)、カプチーノが285ルーブル(500円)。
予想外の出費になってしまったが。


歩行者天国のアルバート通りに沿うようにして巨大な新アルバート通りが斜めに走っている。
かつてのソビエトを象徴するような無機質な巨大マンション群が並び、巨人の街のようだ。



新アルバート通りの先にロシアっぽさとは無縁の超高層ビル群が垣間見える。
昨年旅をしていたキルギスのビシュケクにあるカフェで飾られているモダンな高層ビル群の写真を見かけて、
ドバイの写真だろうか、と思っていたらここモスクワだった。
高層ビルの多さや高さでランキング付けしているemporis.comの世界都市スカイラインランキングによると、東京はもちろん、バンコク、上海、ドバイさえ抜いて第10位のモスクワ。
その高層ビル群が集まっているのが急ピッチで建築ラッシュが進むビジネス街「モスクワシティ」らしい。
歩くと遠いので地下鉄でモスクワシティへ向かう。


地下鉄もモスクワの観光スポットの一つ。
地下鉄が走っているのが地下深いため、異様に長いエスカレーター。
トンネルを下っていくのに2分以上かかってしまう。


噂通り美術館のように豪華絢爛な地下鉄駅構内。
奇抜なメトロの空間こそソビエトの雰囲気が漂っている。


ただ、モスクワの地下鉄は乗り換え時が面倒なことに路線によって駅名が違うので混乱する。
しかも乗り換え駅まで距離があり、迷宮内を歩いているような錯覚に陥る。



地下鉄4番線、Vystavochnayaという駅で降りるとビジネス街「モスクワシティ」に到着する。
いきなり現れるモダンなショッピングモールはロシアにいるという現実感を薄くさせる。


モールから出るといきなり頭上に現れる高層ビル群。



300メートル級のモダンな長高層ビルが密集しているため、
emporis.comの世界都市スカイラインランキング1位、2位の香港、ニューヨークよりSF的な世界に感じる。



すぐ近くに川にかかる橋があり、対岸から眺めるモスクワシティは圧巻。
ヨーロッパとは思えないスカイラインに見入ってしまう。


実際に訪れてみて新しい発見があるモスクワである。
うんざりするほど長かったシベリア鉄道の日々から一変、
好奇心を刺激されるヨーロッパ最大都市モスクで合計6日間、
氷点下の冷気に負けず町歩きを堪能したい。











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